一瞬で大切なことを伝える技術
本の紹介
筆者はあとがきでこう主張している。
- 「スキルは同じ事を繰り返さないと身につかない。だから使うフレームワークは1つか2つに絞る」
- 「一般のロジカルシンキングは複雑すぎる。もっとシンプルでないと使えない」
- 「本書のターゲットは「ロジカルシンキングに挫折気味のひとたち」つまり、論理思考経験者です」
本まとめ
■STEP1 言いたいコトをはっきりさせる
・言いたいことがふらふらしていたら、絶対に、相手には伝わらない
・「重要思考」=「重み」と「差」
・「自分の言ったことで一番大事なコトはなんだと思う?」と相手に問いかけてみる
・人は「程度」が大ざっぱ。「程度」をはっきりさせる。また、それがどこのことなのか「範囲」をはっきりさせる。
・塊の範囲や程度をはっきりさせ、つながりの向きや太さをはっきりさせる。それだけで十分ロジカル。複雑精緻なピラミッドなどいらない。
・まずはフワフワを固めること。言いたいことを「塊」と「つながり」に分けて、はっきりさせること。
・重要思考は、あれも効く、これも効く、いやいやこれも、ということは許さない。どれが一番大事な原因かを問う。
・大事でないならどうでもいい
・たいてい人は「差がある」ところしか考えない。不思議な事に「大事かどうか」がいつも抜けている。
・大事かどうかは、その付加価値やコストの「重み」で図れる
・コストの何割を占めるのか?、付加価値のどれだけを占めるのか?
・何か策を思いついたら、すぐもう一度考えよう。「重み」はどれくらいだろうか、と。
・考えを書くことをオススメする。言葉に落とすことで、フワフワとした思考は固定化され、初めてロジカルの世界で扱えるようになる。
・なんとなく言いたいことがあったのに、疑わしくなって振り出しに戻ってしまうもはとてもいい事。それこそが「重要思考」の価値。
・範囲も程度もわからないものは、主張の「塊」として、失格。
・トップダウン:何が大事かを先に考えて、その差を調べる
・ボトムアップ:どんな差があるかを先に考えて、それらがどれくらい大事かを調べる
・トップダウンもボトムアップも行き着く先は同じ。行きやすい道をいこう。
・悩みとは思考の停止である
・話すことで考える
<STEP1チェックリスト>
- ロジカルの超基本は塊とつながり
- 大事でないならどうでもいい
- 大事かどうかは「重み」で示す
- 悩みとは感情であり、思考上は停止状態
- 止まっている思考を動かすのには「人と話す」ことが一番
■STEP2 言いたいことを相手に伝える
・言いたいコトを文章だけで書き下せるか
・「重み」と「差」で話す。大事なところでこんなに差があります!と
・「重要思考」で話す時のイメージは、七夕の短冊。願い事を短く丁寧に書き、神様(相手)にしっかり渡す。
・説明は2次元(絵)でなく1次元(文章)に
・絵は2次元のものなので、上下左右どちらにでも進めてしまう、説明もあっちに行ったり、こっちに行ったりが可能。本人はつなげて話しているつもりでも、聞く方からするとジグソーパズルをパチパチはめられている感じ
・立体のものを思い浮かべてそれを理解させようとしても、ほぼ伝わらない。我々の言葉はまだそこまで発達していないし、それを限られた語彙で表現し理解する能力もない。
・「スタッフ5人全員、やる気を失っている」といった、ただの伝聞情報(しかも一人から聞いただけ)を今流すことは、害になるだけ
・「ワンスライド・ワンメッセージ」
・上司へのホウレンソウに上手下手があるとすれば、それはどれだけのことを伝えられるかではなく、どれだけのことを捨てられる(伝えない)かにある
・「1分で話す!」ことを自分に課す。そうすれば、伝えられるのは一番大事なことだけである。
・「5ワード以下で区切りながら、短く話す」「言い直さない」が鉄則。言い直すくらいなら、同じ事を繰り返そう。それが嫌なら黙って相手が理解するのを待つ。沈黙に耐えながら。
・相手に結論を言わせる:大事なこと(前提)として、「最終目的」「判断基準」を示してまず合意を得る。そして選択肢を示す。選択肢はいくら増やしても構わない。その中に押したい結論さえ入っていればいい。
・「〜ということが1つある」なんて無意味。一番大事な、たったひとつの原因を知りたい。
<STEP2チェックリスト>
- 重要思考で話すとは、「差」だけでなくその「重み」を伝えること
- 相手があまりにせっかちなときには結論はあとで言う
- 最高なのは最後に結論を相手に言わせること
- 一度に伝えることは1つ
- そのための練習として「1分で話す!」
- 人間が一度に記憶しておける単語数は5つ
- いっぺんに起承転結全部は話さず、段落ごとに区切って話す
- 重要思考で話すときには「〜が1つある」は使用禁止用語
■STEP3 相手の言いたいコトを理解する
・相手は、何をどの程度すごい(「差」)と言っているのか
・相手は、ホントは何を大事(「重み」)だと思っているのか
・そもそも「塊」と「つながり」は、明確か
・重要思考で聞く
→一番大事なことは何?
→それを実現するために大事なことは?
→それらに対して、オプション間での差はどれくらい?
・明確化:繰り返し・質問
・確認:言い換え・要約
・「言い換え」や「要約」は、聞いたままではダメなので大変だが、失敗を恐れず短く表現するのがコツ。「つまりは、〇〇ということですか?」と返すことで「いや、そこまでじゃないんだけど」とまた相手の考えや説明が進む。ただし「要は〇〇なんだ!」と断定しないこと。
・論理と感情を分ける、事実と推測を分ける
・話したい誘惑を押さえる:つい口をはさみたくなる気持ちはよくわかる。でもせめて、一回は全部、言いたいコトを言わせてあげる。どんな相手の話にも、よく聴くと新しい発見がありませう。なのに自分の知っていることや知見を、しゃべりたい、しゃべりたいと身構えていたは、そんな発見もままならない。
・そんな面白い話など相手がするわけない、という己惚れが「しゃべりたい」病につながるのだ。そんなに自分って優秀でしょうか。相手の話に潜む、大事なことや面白い差を発掘するのが、聴くことだと割りきろう。
・大事なところだけ、びしっと口をはさみましょう。「ん? そこは〇〇なんだ。不思議だねえ」「もうちょっと考えてみようよ」聴くことは自分の考えを示すことではない。相手が考える手助けだ。それを忘れないように。
<STEP3チェックリスト>
- バカの壁は2つ。思い込みの壁と、理解力の壁
- 相手がしゃべる話が理解しづらいのは、塊やつながりが明確でなく、差と重みが曖昧だから
- 重要思考で聴くとは、相手に重要思考をしてもらい、伝えてもらうこと
- ちゃんと聴くための傾聴スキル:アクティブ・リスニング
- 相手の話が長すぎたら、ちゃんと切る
- 上司相手の傾聴は難しいが、原因はあなた自身の感情だったりする
- 法律上の誘導尋問とは、答える範囲を狭める質問
- 傾聴での明確化や確認は誘導尋問になりがちなので、注意
- 相手が話すことはまずは材料だと思って、とにかく聴く。しゃべりすぎない。
■STEP4 相手とちゃんと会話・議論する
・議論になっていない質疑応答
→Aのリスクについては検討しましたか?という曖昧な質問。
→Aのリスクについて確認されているのに、Bのリスクについてはちゃんと考慮したよ、という答え。
・聞いた意図と違う答えが返ってきたら、ちゃんと突っ込み返す。質問者は何のために尋ねたの? それを考慮したら結論が違うじゃないのって言いたいんでしょ。だったらそう言おう。逃げてはダメ。
・賛否を示し、「コメント」とかに逃げない
・決め方を決めておき、雰囲気で決めない
・〇〇分析の話が大事かどうか(結論を左右するのかどうか)確認し、大事ならそれについて議論し、ちゃんと結論を出す。それが終わるまでは決して、次の分析に移ってはいけない。ましてや、最初の質問に対しての回答がないうちに、さらなる質問(や賛否)を受け付けるのもNG。これらをちゃんとやるには、強い議長役やファシリテーターが必要。相当皆に嫌われるので覚悟が必要。「〇〇さん、ストップ。勝手に喋らないでくださいね〜」「△△さん、それ違う話ですよね。まず今の話の決着をつけましょう。その話はその後でやりますから」
・会議の最初に宣言する。「発言においてコメント的発言は、不要です」「発言の際には、提案への賛否を明確にしてから、発言して下さい」
・意見が割れたときどう決めるかを、事前に定めましょう。あくまで全員一意にこだわるのか、多数決で決めるのか、それとも責任者に決定を委ねるのか。それさえ決まっていれば、なんとかなる。
・多数決付き一人で意思決定、というのもある:議論の後、意思決定者を除く全員で決をとる。GOかNO GOかの二者択一、棄権なし。その後、意思決定者が、最終的に決める。
・I hear and I forget. I see and I remember. I do and I understand.
・相手のやる気は、そのテーマが自分に関係あるかどうか、議論することで結論が変わるかどうか、で決まる。なら、結論に責任をもってもらおう。
・さんざんしゃべった後、相手に聞く。「今私が話した中で、一番大事なのはなんだと思う?」。この質問をすることで、ぼーっと聞いちゃいられないから、ちゃんと話を聴くし、自分で考えるし、しかも自分が大事だって思ったことは実行する。子供にもやってみる。
・大事なことを相手に決めてもらう方式。
<STEP4チェックリスト>
- すれ違いの議論を空中戦という
- 会議の無駄や暴走・迷走を防ぐ、5つのルール
- ルール3 勝手に話さない、大事なことからずらさない
- 大事なことについては必ず結論を出してから、次に進む
- 議論に入る前にまず、決め方を決める
- 百聞は一見にしかず、百万聞は一行にしかず
- 発言を促すためには小グループから積み上げるのが有効
- 相手のやる気を引き出す究極技は、議論で相手に決めさせる
■上級編 「重要思考」でほめる・つなぐ・ファシる・決める
・褒める極意:1つは他とちゃんと比べること。もう一つは、相手の大事なところで褒めること。
・相手が自信を持っているところは思い切り褒める。相手が足りないと自覚しているところをただ凄いと褒めるのは逆効果。こういう時は、その絶対的レベルでなく、成長性や努力を褒めるのが良策。
・マーケティングの究極の目標は、売り込みを不要にすることだ(ドラッガー)
・マーケティングとは、顧客の創造である
→原義は「容易にする」「準備する」「おこなえるようにする」で、会議や話し合いが円滑かつ有意義に進むためのサポートをすること。
→重みがこれで差はこうだ、という答えは参加者に任せる。
・ファシリテーションの3パターン
- プロセスを伝える → ①コーチ役として議論の仕方のみ口を出す
- 横に立つ
- 主なセリフはもちろん「重要思考になってない」。
- 「それって大事なの?」「重みと差を明らかにしよう」と語りかける。
- 視点を伝える → ②ツッコミ役として質問だけを投げかける
- 後ろに座る
- 主なセリフは「つまんない」
- 「ほんとにそれが大事なの?」「そんなもの「差」とは思えないな」とバンバン突っ込む。
- 答えに導く → ③リード役として考え方のフレームワークを与える
- 前に立つ
- フレームワークを書いて仕切る
・最後のまとめ方:最初に決めた「決め方」を皆に確認し、今後のスケジュールや役割分担をはっきりさせる
・議論への応援団。それがファシリテーターの姿勢。
・釜石の奇跡:震災で人口3.9万人のうち1300人超が死亡・行方不明となった岩手県釜石市では、3000人の小中学生が数名の例外を除いて無事だった。→ただ座って聞くだけではない、自分で考えて行動してみる防災教育だったからこそ、役に立った。