私的 本まとめ

自己の脳内シナプス伝達強度増加させるべく、読んだ書籍の内容をアウトプット。読む目的を設定し、その目的に沿った部分を抽出して紹介します。かなり内容をすっ飛ばしているので、気になったセンテンスを見つけたら、ぜひ本を手にとってみてください。目標ペースは1冊/Week。

経理の仕事術

読書目的

経理業務の改善のヒントに。また、一般的に経理畑の人たちがどういうキャリアアッププランを考えているのかを知るために。

本まとめ

・期限の定められる経理業務は、やり直しやトラブルに備えるためにも期限ギリギリではなく、前倒しでしておいた方がいい。

・どの仕事も最初の一歩を小さな作業に小分けして、少しだけ手をつけておくと、前倒しで仕上げようと思うはず。

・仕事の速さの違いは、取りかかるまでの時間の差であることが多い。取りかかりやすくするようなタスクリストの工夫も大切

・1日の中で2時間、一切の私語や問い合わせを禁止し、業務に集中する「がんばるタイム」を設定したら、効率アップに大きく貢献した例がある。

・正確性が必要とされる経理作業には「集中して作業ができる時間の確保」が大切。割り込みの入りやすい業務だからこそ、出来る限り「時間の色分け」を。

・過ちのリカバリーがききにくい業務

・積み上げるべき基礎データの時点からきちんと数値を合わせる。

・極力二度手間に陥らないことを心がける

・担当者の机ごとに情報がバラバラに収納されていて、無意味な問い合わせで仕事が中断するうえに、資料探しに時間が消費されている。

・資料の格納場所をルール化する

・各人のキャビネットに資料は極力置かず、共有のキャビネットには統一感のあるボックスファイルが順番の狂わないように並べられていたり、中に格納されている資料がすぐに把握できるような工夫をする

・「チェックを怠ったことによる二度手間」と「資料を探すムダ」を極力減らすことからはじめる

・チェックをきちんとして二度手間を防ぎ、資料を探す時間を減らすことで、誰でも今より仕事を早く終らせる事ができる

・「自分自身を必要としない仕組みをつくる」

・教わり上手:こちらが教えたことを素直に聞き、教わったことをすぐに活用しようと努力する人に対しては、もっといろいろ教えてあげようと思うし、こちらがリスクを取り、フォローをしながらでも成長のためのチャンスを与えてあげようと思うもの。

・「クイックレスポンス」にこだわる:あえて時間効率を犠牲にしてまでのはなぜか?それは「相手の仕事の流れを止めない」ことで「顧客満足度を上げる」ため。

 →自分の作業効率より仕事を依頼した人の満足度を優先した方が周りの評価が上がり、結果的には自分の時間効率を早く上げることに繋がると信じているから。

 →メールの要件によっては、すぐに回答だけしておき、込み入った返事になるのであれば、まずはメールを受信したことを連絡し、いつまでに回答するというメールをするだけでも、相手のストレスは大きく軽減されるはず。

 →簡単にメールを返信する際はメールの最初に「出先より失礼致します」と書く

・基礎データに誤りや抜けがあると、すべての作業をやり直さなくてはいけないのが経理業務。

・やったことがなくても「得意だ」と言って仕事を受けてしまう。仕事をいったん受けた後に必死に努力をして、事案が終了する頃には本当に得意になっていた

・「英語」「会計」「IT」のスキルは、これからのビジネスパーソンに必須の「三種の神器」だという人がいる。

・スキルアップを目指すのであれば、「なりたい自分」と「現状の自分」を比較し、身に付けるべきスキルを列挙して、それらを一つひとつクリアしていくことが必要。

・「目の前の仕事」で成果を出すための勉強。

・「目の前の仕事の専門家」になることが、なりたい自分になるための最初のステップなのだ。

・「仕事はそのために与えられた時間の限界まで増える」(パーキンソンの法則)

・「誰のため」「何のため」の仕事なのかを確認し、ムダな業務そのものを排除する

・業務効率を改善するために最初にすべきこと:やらなくてもいい作業を見つけ出す

・本当にベストなのかという疑問を持ち、不要な作業はないかと検討することが必要。

・「間違った問いへの正しい答えほど始末におえないものはない」(P・F・ドラッガー)

・一番ダメな業務改善は、そもそも必要のない作業に対する訓練を行い、処理スピードを上げること。その努力はまったくの無駄であるだけでなく、それだけの努力を重ねてしまうと、その作業をすごく大事なもの、かけがえのないものであるように思ってしまう。

 →(例)「勘定元帳にインデックスを貼る作業を効率化するにはどうしたらいいのか」という問いに対する効率的な改善案は、「科目名が印字されたインデックスを購入する」というものかもしれませんが、その問い自体が誤りなのだ。 正しい問いは「誰のため、何のために総勘定元帳にインデックスを貼るのか」であり、正しい改善策は「総勘定元帳にインデックスは貼らない」ということになる。

・分解した作業項目をExcelで整理する。「書きだす」「並べる」「書き加える」だけで誰でも簡単にマニュアルの骨格を作れる

・マニュアルを簡単に作る基本ルール;「何を」「どうする」という形で書く。必要に応じてそこに「誰が」「いつまでに」を加えていく

・マニュアル作りに役に立つポイント

  • 「問題児のミスを歓迎する」:マニュアル作成段階ではそんなのは常識で考えればわかるはずというのを禁句にする。問題児のミスを随時マニュアルに取り込む。
  • 「できるだけ数値で表す」:多い、少ない、は万人が同じことを考えるものではない。
  • パソコン操作中の動画を記録できるソフト:カムスタジオ(http://www.capture-soft.jp/

・チェックリストはもっとも優秀な人がつくる:成果の上がる行動をパターン化し、普通の人でもそれを真似できる仕組みをつくる

・チェックリストの「過剰品質」に気をつける

・財務分析は自分でするな。財務分析サービス:経営自己診断システム(http://k-sindan.smrj.go.jp/)の利用

・覚えておきたい財務指標

  • 手許流動性比率=手元流動性÷平均月商
    • この比率が高いと、資金が潤沢にあり倒産しづらいということを示す。
    • 逆にこれが高すぎると、せっかく自分が投資した資金を、なんで利益をほとんど生まない現預金なんかにしておくのだ、となる。
    • どれくらい持っておくべきか?:2ヶ月間売上がなくても資金ショートしないだけの現預金を持っておいてほしい
  • 債務償還年数=銀行借入金残高÷債務償還財源
    • その会社が何年で融資を返済できるかを表す指標
    • 10年以内であることを融資決定の一つの条件としているケースが多いようだ
  • 労働分配率=人件費÷付加価値総額×100
    • 会社が稼ぎだした付加価値(ざっくりいうと粗利益額)をどれだけ従業員に分配したかということを表す指標
    • 働く側にとって、一概に高いほうがいいとはいえない。高いということは、
      • 売上が減った時にはすぐに人件費をカットせざるを得ないことを意味する
      • 今後給料が上がる余地は小さい

顧客満足度や評価が上がるのは「顧客のピンチを救うことに寄与」したとき

・資金繰り表は「なぜお金が必要で」「先々、そのお金をちゃんと返すことができます」というストーリーを数値で描くもの。試算表などに記載された売上高や仕入高等の数値とつじつまがあわないものは論外である

・前記対比の決算書をベースに、大きな変動事項にはその要因をコメントし、今季の予測や希望する資金調達の方法を記載すれば十分

・金融機関への決算報告では決算書のほかに「前期実績の総括」「今期業績の予測」「希望する資金調達の方法」を1枚のシートにまとめて報告しよう

・成果なんてものは運しだい。成否の差なんて紙一重である

・「才能×努力」の総和が一定量に達した時に「入場チケット」がもらえ、そのなかから運によって成果をあげられる人が選ばれている

パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則

読書目的

デザインパターンというコンテクストで必ずと言っていいほど登場する人物「アレグザンダー」とは何者なのか、建築とソフトウェアの類似点はどこか、Wiki=WikipediaのようなものというWikiへの浅い理解の解消、「時を超えた創造の原則」というサブタイトルの響きのかっこ良さから本書を手にとった。

本まとめ

第1部 建築

・老練な大工は、後で修正できないようなことは決してやらない。だからこそ、自信たっぷりと着実に仕事を進めていく。

・アレグザンダーの出した結論は、利用者と専門家が協力関係を築き、パターンランゲージを作り上げ、適切な設計を現場で一歩ずつ生み出していくという、新しい理論と思想だったのだ。

・アレグザンダーは、自然都市が備えている質のことを「無名の質」と呼んだ。

・「無名の質」という言葉は老子の「道(タオ)」についての教え、「「道」は名づけ得ぬものである」という言葉にインスパイアされたものだと思われる。

・パターン・ランゲージは単なる部品集でも事例集でもなく、利用者と建築家をつなぐためのさまざまな工夫の集積である。パターンはそのための道具の一つなのだ。

・パターン・ランゲージの「ランゲージ」は人間同士のコミュニケーションの道具という意味で付けられた名前ではないのだが、利用者と建築家はパターンを語彙としてコミュニケーションに活かすことが出来るため、利用者と建築家をつなぐ共通言語としても機能する。

・哲学者プラトンは哲学者を建築家にたとえた。思想もまた建築的に作り上げられていくべきだ。

・パターン・ランゲージでは、各々のパターンは上位と下位のパターンとのつながりを持っているが、それらをどのように組み合わせるかについてのルールはない。パターンが適切な形で組み合わされると質は高くなり、生き生きとしたものになるが、組み合わせが不適切だと質は低くなり、生き生きとしたものにならない。

第2部 ソフトウェア開発

・1968年12月、スタンフォード研究所の研究者ダグラス・エンゲルバートは、サンフランシスコで開かれたコンピュータに関する会議で、伝説的なプレゼンテーションを行った。マウスによってポインタを動かし、画面上にウィンドウを開いて対話的にコンピュータを操作するというもので、「GUI」という新しい概念を提示した。

・1984年、AppleMacintoshを発売。一般的な企業や個人でも変える価格帯で発売されたMacintoshは、研究室でしか使われていなかったGUIを瞬く間に世界に広めた。

・建築の利用者が設計すべきだとアレグザンダーが言ったのと同じように、ベックとカニンガムはシステム利用者に最終設計をしてもらうことにした。

・設計されたユーザインタフェースを見て、二人は非常に驚いた。簡素だが、非常にエレガントなデザインが実現されていたのだ。

・BOF(Birds of a Feather):特定のトピックに興味を持つ有志の集会

・一般にグローバル変数はプログラムのどこからでも読み書きができるため、使うことが推奨されていない

オブジェクト指向ではこのような「グローバルな状態」を管理するための専用のオブジェクトを用意することがあるが、そのオブジェクトはアプリケーション全体で一つしか存在しない前提が守られなければ、バグの温床になる。

・ソフトウェア開発において「町」「施工」といった粒度に相当するパターンは何か?

 →「施工」に相当するパターン:「実装」

 →「町」に相当するパターン:ソフトウェア全体の基本的な構造である「アーキテクチャ

・「C3プロジェクト」(クライスラー総合報酬プロジェクト:COBOL給与計算プログラムの刷新)が、エクストリームプログラミングの記念すべき最初のプロジェクト。

・「リファクタリング」の著者:マーチン・ファウラーもC3プロジェクトにコンサルタント(タスク分析とテスト支援)として関わっていた。

・C3プロジェクトのプラクティス

 →テスティング:実際のコードよりも自動テストのコードを多く書くほど、テストを重視

・プロジェクトの4つの変数は以下。これら4つについて誰が決定権を持っているのかを確認し、彼らが適切な判断を下せるように開発状況と見積もりを報告する

 →スコープ:何をすべきか。実装すべき機能。

 →品質:求められる正確さやそのほかの「良さ」の基準

 →リソース:人員や設備など、プロジェクトに投入可能な制限

 →時間:プロジェクトの期間

ユニットテスト:全てのクラスは、正常に動作するかを確認する自動単体テストを持っていなければならない。クラスを書く前に、まずユニットテストを書くことを推奨する。

継続的インテグレーションと徹底的なテスト:個々の開発成果を頻繁にコードベースに結合し、ユニットテストを100%パスする状態を常時保つ。

・どうせ必要にならないって!:現在の要求を満たす必要十分なコードだけを書く

・コード所有権:コードの所有権を開発したチームだけに留めない。

ペアプログラミング:二人一組でプログラミングを行う。具体的な実装イメージをはっきり持っている方がコードをタイプし、もう一人はそれを注意深く見守る。タイプミスや文法間違いなどの細かい視点や、システム全体との整合などの大きな視点で相手をサポートする。進捗が早くなり、長時間スピードが落ちず、質も高まる。

エクストリームプログラミング

  • 週40時間労働:2週続けて労働時間が超過しないようにする
  • プロセスやツールよりも、人と人との交流を
  • 計画に従うことよりも、変化に適応することを
  • システムを出来る限りシンプルに保つ。状況は変化する。予想で将来に備えた作業をすると無駄になる可能性がある。無駄なことに時間を投資しないように意識する。
  • 勇気:プロジェクトがまずい方向に進んでいることに気づいたとき、それを修正するための勇気を持つ。例えば、一日中取り組んでうまく行かなかったコードをいったんすべて捨てて、翌日ゼロからやり直す。また、プログラムの根本的な問題に気づいたとき、今までうまく動いていた他の部分を犠牲にしても、それを修正するための大きな変化を行う。
  • 改善:完全であることを目指すのではなく、改善できることから順に改善していく
  • 機械:問題を変更の機会としてとらえる
  • 冗長性:重要で困難な問題には、冗長性を持って対処する
  • 小さなステップ:可能な限り、小さなステップで変更を行う
  • ストーリー:顧客の要求は、顧客の目に見える機能単位でシステムがどのように動くのかを記した「ストーリー」と呼ぶ短い文章として表現する
  • 1週間サイクル:1週間サイクルで作業を計画する。週の初めのミーティング:進捗確認、その週に実装するストーリーを確認。
  • ゆとり:どのような計画にも、遅れが生じた場合に捨てることのできる、重要でないタスクをいくつか含めておく。
  • テストファーストプログラミング:コードを変更する前に自動テストを作成する。
  • 根本原因の分析:5回のなぜ。突き詰めると技術ではなく人間の問題であることがほとんどである。
  • コードとテスト:コードとテストだけを成果物として保持し、それらから他のドキュメントを生成する。顧客にとって、本質的に価値があるのはコードとテストだけである。それ以外の無駄は極力省くようにする。
  • 結合は、自分たちの開発成果が他の全体と矛盾していないかどうかを検証する作業。この間隔は長くなればなるほど矛盾するリスクが高まるため、数時間置きに頻繁に行うことが推奨される。
  • テストファーストプログラミング」プログラムの実装は、テストをパスすることを目標に行う。
  • リファクタリングと機能の追加や変更を同時に行なってはいけない。

第3部 Wiki

・「キャメルケース」(CamelCase)とは、英単語の1文字目を大文字にして、2単語以上をくっつけたもの。

World Wide Webの誕生は1991年

・WikiName:キャメルケースによるリンク表現、Wikiの本文中にキャメルケースで文字列を示すと、それがそのままページヘのリンクになり、ページが存在しない場合にはページ作成画面へのリンクとなる。

・Wikiモードで重要視されていた2つの区分:「スレッドモード」、「ドキュメントモード」

・「スレッドモード」:主観的な意見の集積から成り立つ。各自の最後の意見に「--」に続けて署名を残し、それが縦に連なっていく形式。フロー情報。

・「ドキュメントモード」:ページが客観的な記述の集積から成り立っている状態。主観的な記述が排除されている状態。辞書や百科事典のような記述。ストック情報。

・その他のモード:「ハイブリッドモード」「オピニオンモード」「FAQモード」「パターンモード」

・Wikiページのライフサイクル

  1. 何を記録するためのページかという「宣言文」を記述
  2. この宣言文に対して、各自が自分の考えを主観的に署名付きで記述。
  3. 議論が発展し、ページはスレッドモードとして成長
  4. 議論が合意を得た場合、その合意事項を客観的な記述としてページ情報に残す。:ハイブリッドモード
  5. 残っていたスレッドモードの議論がある程度沈静化したところを見計らって、ドキュメントモードに誰かが移行する。

・「Wikiマスター」:冷静な視点を持ち、参加者のさまざまな意見を公平に取り上げつつ合意に達する判断力やコミュニケーション能力が求められる。

・Wikiは、誰もが自由に、他の人の記述も含めてどこでも書き換えられます。それが非常にラジカルで、すごいことなのだが、その代わりにそのような環境を維持するためには非常に大きな努力が求められる。

・パターン形式:パターンモードで使われるパターンを記述するための形式

  • パターン名:ページタイトルとして、パターンの名前を述べる
  • 状況と制約条件:問題となる状況と、その解決のために考慮すべき諸条件について述べる
  • それゆえ、(Therefore, ):太文字で「それゆえ、」と一行書く
  • 解決策:問題の解決策について、いくつかのパラグラフで述べる
  • しかし、(But, ):太文字で「しかし、」と一行書く
  • 反論:上記の解決策についての反論を述べる

・Wiki設計原則

  • 開放の原則:不完全なページやうまく整理されていないページを見つけたら、どの読者でも自分が適切と考える形に編集できる
  • 斬進の原則:ページは、まだ書かれていないページも含め、別のページにリンクすることができる。(→Wikiの斬新的成長を促す)
  • 信頼の原則:Wikiで最も重要なこと。人々を信頼せよ、プロセスを信頼せよ、信頼構築を可能とせよ。誰もがコンテンツを管理し、チェックする。
  • 楽しさの原則:誰でも貢献できる。誰も強制されない。
  • 共有の原則:情報、知識、経験、アイデア、視点を共有せよ。

・XPとWikiは、アレグザンダーの建築理論という同じ出発点を持つ、兄弟のような関係にあると言える。

・XPのプラクティスを参考にWikiを記述していくことが出来る。Wikiはドキュメントを記述する環境だが、まるでソフトウェアを開発するかのように考えて使っていくと、うまく発展させていくことができる。

・ドナルド・クヌース:アルゴリズムの研究などで有名なアメリカのコンピュータ科学者。1968年、彼はコンピュータのアルゴリズムをまとめた書籍「The Art of Computer Programming」の第1巻を出版。このシリーズは未だに執筆が続けられている。全7巻を予定しており、現在は第4巻の分冊まで刊行されている。第5巻は2015年出版予定。1938年生まれのクヌースは2015年には77歳を迎える。

クヌースは、プログラムは「文学」と同じように芸術的な存在として認められるようになるべきだと主張し、「文芸的プログラミング」という手法を提唱した。文芸的プログラミングは、プログラムも一種の文章として、きちんと人間が頭から読める形式として記述する手法。プログラム全体を文章中に埋め込む形で記述する。

wikipedia.comサイトの立ち上げは2001.1.15

はてなダイアリーは日本独自のWiki文化の一つ。

ニコニコ動画では、タグの編集を誰でも行えるようにすることで、タグの編集をあたかもWikiの編集のように扱っている。

あとがき

・XPのプラクティスを入り口として、自分たちの開発プロセスを改善する方法を自分たち自身で考え続け、そこから得た経験をまたプラクティスとして抽出するようにする。

・利用のルールを自分たち自身で考え続けて実践することで、はじめてWikiをWikiらしく使いこなせるようになる。

デザインパターンもXPもWikiも、取り入れれば改善されるという魔法の手法ではなく、自分たち自身のプロセスを見直し、改善出来る点を改善し続けることによってようやく有効に働くようになる生成的なプロセスである。

知的複眼思考法

読書目的

ビジネスシーンで話をする(=時間を使う)なら、相手に新しい何かを持って帰ってもらわないと価値がない。相手に与えられる価値ってなんだろう。相手が持つ視点と違った視点から、ものごとを捉えて、それをアウトプットすることだ。自分の知識や経験を相手に与えることはもちろん、一緒にみているものごとを見えたまま短絡的に捉えるのではなくて、多面的に捉えて、相手が気がつかない、ものごとの裏面まで考えてアウトプットする人になりたいと思い、本書を手にとった。

本まとめ

序章 知的複眼思考法とはなにか

・単眼思考に陥っている場面

  1. 他の人の意見に対し、「そんなものかなあ」と思って、自分で十分に納得しているわけではないけれど、「まあいいか」とやり過ごしてしまった。
  2. 本当は、ちょっと引っかかるところもあるのだけれど、「そういわれれば、そうかなあ」と、人の意見を消極的に受け入れた。
  3. 「あなたの意見はどうですか」と聞かれた時、少しはいいたいことがあるのに、はっきりと自分の考えがまとめられずに、結局は「特にありません」と答えてしまった。

・本書の目的

  1. 人の意見を簡単に受け入れてしまわずに、批判的に捉え直すには、どうしたらよいのか。
  2. 自分なりの考えを、きちんと自分の言葉で表現できるようになるためには、どんな工夫がいるのか。
  3. 論理的に筋道の通った考えを展開するためには、何が必要なのか。
  4. どうすれば「常識」にとらわれない「自分の頭で考える力」を身につけられるのか。

・「情報化の時代だから、、、」「日本は集団主義の社会だから、、、」「国際化が進む現在の日本では、、、」など、私たちの身の回りには、紋切り型の決まり文句があふれている。紋切り型の決まり文句になんとなく納得してしまったら、その先を考えるのをやめてしまう。

・自分なりの考えを放棄してしまうと、そこで見落とされたことがらには目が届かないままに終わる。

・自分なりのとらえ直しをしないまま、「他の人と同じ」発想を続けていると、自分にとって本当は何が重要なのかが見えなくなる。

・ある事態を自分自身との関わりのなかで捉え直す複数の視点を持つこと。

・自分で考える力のなさを知識不足や勉強不足のせいだと見てしまうケースは、案外多い。それは、唯一の正解という一つの視点からものごとを捉えようとするからだ。そうした正解を求める態度は、複眼思考とは対極にある考え方。

第1章 創造的読書で思考力を鍛える

・本でなければ得られないもの:知識の獲得の過程を通じて、じっくり考える機会を得ること。つまり、考える力を養うための情報や知識との格闘の時間を与えてくれるということ。

・本は他のメディアに比べて、時間のかけ方が自由である。

・漫然と著者のいうままに、その通りに文章をなぞるように読むのではない。「他の文章になる可能性のあったもの」として目の前の活字を追っていく。つまり、「私だっったらこう書いたかもしれない」とか、「どうして著者はここで、こんなことを書いているのか」を考えながら、文章を読んでいく。

・書き手の書くプロセスを意識するようになると、書き上がったものを「動かざる完成品」だとみる見方は弱くなってくる。つまり、完成品としてむやみにありがたがって本を読んだり、書き手の言い分をそのまま納得してしまったりという受け身の姿勢ではなく、本に接することが出来る。

・相手の言い分をそのまま素直に受け入れてしまうのではなく、ちょっと立ち止まって考える習慣が身につく。

・著者と関わりながら読書するコツ:次のフレーズを書き込みの例に本を読んでみる。

  1. なるほど、ここは鋭い
  2. 納得がいかない
  3. どこか無理があるな
  4. その意見に賛成だ、その意見に反対
  5. 自分の考えとは違うな
  6. 著者の意見は不明確(あいまい)だ
  7. 同じような例を知っている、自分の身の回りの例だとどんなことかな(実例を書く)
  8. 例外はないか、見逃されている事実や例がないか
  9. これは他の人にも伝えたいエピソードやデータだ
  10. もっと、こういう資料が使われていれば議論の説得力がますのに
  11. 自分ならこういうことばを使って表現するな(実際の言葉を書く)
  12. この表現は難しすぎる

・書き手の言い分を鵜呑みにしない読書のすすめ。つまり、批判的な読書を通じて、ものごとに疑問を感じること、ものごとを簡単に納得しないこと、「常識」に飲み込まれないこと、すなわち自分で考えるという姿勢ができてくる

・知識を受け入れようとするだけの読書では、何か勉強したつもりにはなっても、なかなか自分で考えるようにならない

・何かを知ろうと思って読むのか、それとも自分なりに考えるために読むのか。

・批判的に読む=著者の思考の過程をきちんと吟味しながら読もうとすること

・書き手の論理の進め方を、ほかの可能性も含めて検討していく。つまり、対等な立場にたって、本の著者の考える道筋を追体験することで、自分の思考力を強化しようというのが、批判的読書の方法。

・読んだことのすべてをそのまま信じたりはしない態度が重要

・批判的読書のコツ(ピックアップ)

  1. なにか抜けているとか、欠けているなと思ったところに出会ったら、繰り返し読みなおす。
  2. 著者が誰に向かって書いているのかを考える
  3. 著者がどうしてそんなことを書こうと思ったのか、その目的が何かを考える
  4. ありそうなこと(可能性)に基づいて論を進めているのか、必ず起きるという保証付きの論拠(必然)に基づいて論を進めているのかを区別する。
  5. 当てになりそうにもない理屈にもとづく議論は割り引いて受け取る。
  6. 意見や主張と事実との区別、主観的な記述と客観的な記述との区別をする

・論旨に照らして理解する。すなわち、それぞれの文章を流れの中で理解しようとすることを忘れないように、おかしいなと思ったら、読み返す習慣をつける。

・著者の論理を丹念に追う。論理に飛躍がないかどうか。

・出されたデータがそのまま信じられるかどうかを疑ってかかる態度が必要

・何かを主張するとき、著者はかならず、それが正しいことを理由付けようとする。危なそうな議論は割り引いて読み取る。

・著者の前提を探り出し、それを疑ってかかる

・重要なチェックポイント

  1. 著者を簡単には信用しないこと
  2. 著者のねらいをつかむこと
  3. 論理を丹念に追うこと、根拠を疑うこと
  4. 著者の前提を探り出し、疑うこと

・考える読書 4つのヒント

  1. 論争を読む:複数の立場から読む
  2. 先を読む読書:どんな論理展開するかを予測しながら読む
  3. 古い文章の活用:今の時代から照らし合わせる
  4. 書評のすすめ:まだ読んでいない人にもわかり易く説明、文章のエッセンスを的確に捉え、明確に表現する練習。本の問題となる箇所を的確に指摘しておく

第2章 考えるための作文技法

・問題点を探しだすことで止まってしまっては、「批判的読書」は思考力を鍛える半分までの仕事しか出来ない。考える力をつけるにはもう一歩進んで、「代案を出す」ところまでいく必要がある。「自分だったらどうするか、というところまで考えて、そして、考えたことを考えたままにしないで、必ず紙に書くこと」

・「批判的に書く」この章は批判的に読む立場から、その批判をうけて自分自身で考えていくことを説明する。

・考えるという行為は、その考えがなんらかの形で表現されてはじめて意味をもつ

・どんなにすごいことを考えていたとしても、それを他の人に表現しない限り、その考えは、ないに等しい

・書くという行為は、話すのと違って自分のペースで、いきつもどりつしながら、考えを進めていくことができる表現方法

・書くという行為は、もやもやしたアイデアに明確な言葉をあたえていくことであり、だからこそ、書くことで考える力もついていく

・ポイント

  1. まず結論を先に述べ、それから、その理由を説明するというスタイルをとる
  2. 理由が複数ある場合には、あらかじめそのことを述べておく。また、説明を幾つかの側面から行う場合にも、あらかじめそのことを述べておく
  3. 判断の根拠がどこにあるのかを明確に示す
  4. その場合、その根拠に基づいて、推論をしているのか、断定的にいっているのか、わかるようにしておく。
  5. 別の論点に移るときには、それを示す言葉をいれておく(→もうひとつの問題点は・・・)
  6. 文と文がどのような関係にあるのかを明確に示す

・自分自身が賛成か反対かとは別に、相手の立場に立って考えるということが、複眼思考を身につけるうえでは大切なトレーニングとなる

・相手の前提のどこに賛成しかねるのかをまずははっきりさせておかなければ、ディベートにはならない。つまり、どのような立場の違いがあるのかを明らかにしていくことが、反論を書くためのスタートラインとなる。

・立場によって拘束された見方の限界ということを明らかにする。その限界を示すことで、その前提の間違いを論じていく。

・一人ディベートをやる。そのとき、自分で仮想の立場を複数設定して、それぞれの立場からの批判や反論を試みる

・反論や批判は、頭で考えるだけでなく、文章にしてみる。文章にすることで論理の甘さが見えてくる。自分の立場を第三者的に捉えることも可能となる。

第3章 問いの立て方と展開のしかた

・最初から疑問を持とうとしない間は、自分から進んで考えることをしないものである。まずはものごとに疑問を感じること、「ちょっと変だな」と疑いをもつことが、考えることの出発点。

・疑問と問いの決定的な違いは、疑問が感じるだけで終わる場合が多いのに対して、問いの場合には自分でその答えを探しだそうという行動につながっていくという点。

・問いのブレイクダウン:最初の大きな問いを複数の小さな問いに分けていって、それぞれの問いに答えることが最初の問いへの回答になるようにしていく方法

・最初の問いを幾つかの問いに分解したり、関連する問いを新たに探していく、問いの分解と展開によって、考えを誘発する問いを得ることが出来る。

 →(例)「どうしたらよい企画書が書けるのか」を出発点に、「そもそも良い企画書とは、だれにとってよいのか」「どんな判断基準でよいのか」「説得力の点か」「わかりやすさか」「アイデアの良さか」。いや「そもそも、よいアイデアとは何か」「おもしろさか」「有効性か」「実現可能性か」などと、最初の漠然とした疑問を、いくつかの具体的な側面に分けてみる。そしてそれぞれの問いにどう答えていくのか、それぞれの答えが、どのように関係しあって、出発点の問いへの解答になるのかを考えていく。

・何を問題にしているのかがはっきりしていて、どうやっていけば解答に到達できるのか、その手続がわかりやすい「問い」に表現し直すということ。

・最初の素朴な疑問では見過ごされていた、問いの新たな側面を見つけて、最初の問いとの関係を考えていくこと。

・「〇〇はどうなっているのか」:実態を問う形式の問い。このタイプの問いは、そのままではなかなか考えることに結びつきにくい

・問いを少しずらして考えて、思考停止に陥らないようにすると、考えの新しい道筋を見えてくる。

 →(例)「受験戦争が激しくなる」というのは、どういうことか。入試の競争率が高くなることか。それとも受験競争に参加する人が増えたのか。あるいは、そのいずれでもなく、世の中全体がなんとなく思っていることなのか。このように問いを少しずつずらしてみるだけでも、問題の切り口が複数になり、広がっていく。

・ちょっと問いをずらしてみることで、最初の問題を真正面から見ているだけでは見えてこない側面をとらえる、もうひとつの視点、すなわち、複眼が見つかる

・偽の原因に惑わされない。

・原因と結果の関係を確定するための3つの原則

  1. 原因は結果よりも時間的に先行していなければならない(原因の時間的先行)。
  2. 原因と見なされている現象も、結果と見なされている現象も、ともに変化しているのが確認できている(共変関係)。
  3. 原因以外に重要と思われるほかの要因が影響していない(他の条件の同一性)。

・因果関係を考える複眼思考にとって重要なのは、「他の条件の同一性」。「これぞ原因に違いない」と思っていることでも、実はそれほど大きな影響力を持たない場合もあり、気がついていない他の原因によって結果が引き起こされていることも少なくない。

・「擬似相関」:ひとつだけの原因と見なされている要因と結果だけを見ていては、擬似相関は見えてこない。もうひとつ、これぞ本当の原因ではないかと思われる要因を加えて、3つ以上の要因間の関係としてみたときに初めて、最初に見ていた原因と結果との関係が擬似相関であるかどうかわかる。

・擬似相関を見抜く方法

  1. 同時に変化している要因の影響を取り除く
  2. 他に重要とおもわれる条件が同じになるように複数のケースをとって比べることで、同時に変化している要因を取り除く。
  3. 原因と仮定しているパラメータを変えずに、他に影響しそうなパラメータを変えてみる(たとえば、時間(現在と過去)、場所(日本と外国))

・なぜ、という問いは、考えることを誘発する

・ブレイクダウンすることで、「大きななぜ」をいくつかの「小さななぜ」に分けて考えていく。

・ブレイクダウンの方法:「なぜ」という問いに含まれる「主語」を、それを構成する下位の集団に分解していく

 →(例)「日本企業は」というのが問いの主語であれば、これを「製造業」と「非製造業」に分けてみたり、あるいは企業規模に分類する。

 →(例)「二十代の若者」が主語の場合には、男女で分けたり、勤労者か学生か、勤労者の場合は勤め先の職業は何か、学生の場合はどのなタイプの学校にいっているかといったように主語を分けていく。

・概念化のメリット:共通性を高め、個別の細かな事情を切り捨てていくこと(捨象すること)。

・「個性」とか「創造性」とか「合理性」といった概念は、なんとなくわかったつもりになるが、明確な定義付けなしに使われる事が多い。

・概念のレベルでものを考えようとする場合、それがどのような内容を示すのかを明らかにしておかないと、ただの抽象論に終わる。

・複眼思考を身につけるためには、概念のレベルで問題を考えていくことが重要。なぜなら、個別のケースの中で考えている限り、そのケースを超え出る問題の広がりには目が向かないから。

・概念とケースの関係を使い分ける。個別のケースから概念へという抽象度を上げていく方法

  1. 複数のケースを並べて、それらに共通する部分は何かを考えること。
  2. それらを共通するものとして、くくることの出来る概念は何かを探すこと。
  3. その概念をどのような意味で使うのか、定義をはっきりさせること。

・このようなレベルでの仮説を作ることによって、具体的な個々のケースのレベルで考えていたのでは気がつかない、ケースの個別性を超えた原因やその関係にまで目が行くことになる

・概念はサーチライトである。新しい概念の発見によって、新しい問題が見えてくる。

 →(例)「過労死」は概念。ひとりの人間の「病死」として見るだけではない。過剰な労働やストレスを生み出す職場と、そのなかでどうしても健康を害してまで働いてしまう勤労者との複合体として、その「死」を捉える概念「過労死」の登場によって、個人の問題が社会の問題へと広がりを持って認識されるようになっていった。

・ケースのレベルと概念のレベルの使い分けによって、問いを展開させる。これは、問題の一般化と具体化ということに対応する。

・二つ以上のケースを比較することで、両者に共通する特徴を概念としてつかみ出し、概念レベルで原因と結果の関係を表現しなおしてみる。

・概念レベルで考えた原因と結果の関係を他のケースにあてはめてみる。

第4章 複眼思考を身につける

・この章は以下を説明する

  • ものごとの多面性をとらえるための「関係論的なものの見方」
  • 意外性を見つけるための「逆説の発見」
  • ものごとの前提を疑うための「メタを問うものの見方」

・「主語」を幾つかのグループに分解していく方法、これを少し発展させると、「関係論的なものの見方」に到達できる。

・一つの問いを二つに分けてみる。ポイントはものごとを構成している二つ(以上)の要素に目を向ける

・複眼思考法の出発点は、どのようなことがらも、複数の要素間の関係によって、目の前の一つの現象として現われている、という見方をとること

・目の前の問題(事象)は、どのような要因(要素)の複合かを考える(=分解)

・それぞれの要因の間にはどのような関係があるのかを考える(=相互作用の抽出)

・そうした要因の複合のなかで、問題としていることがらがどのような位置を占めているのかを考える(=全体の文脈への位置づけ)

 →(例)水戸黄門の印籠:権力は、印籠の中に実態として込められているのではなく、それに従う人々が存在してはじめて権力として外に見える

・機能的だとか、センスがいいとかいった価値は、実際には顧客がその製品に与えている。つまり、顧客とその者との関係の中で決まっている。それを、製品の側から見た場合に、「この製品には魅力がある」といった実体的な言い方を私たちはしている。

・「製品の魅力」が、製品の属性ではなく、顧客との関係の中で関係論的に決まっていることの好例:ポケベル

・関係自体を固定しない。つまり関係自体も変化しているものとして見る。

・ものごとを作り出し、意味を与えている関係を捉えるだけではなく、そうした関係自体がどのように変わってきているのかを問題にすることによって、私たちは実体化するものの見方が、どれだけ事態を固定してしまうのかを考えることができる。

・「意図せざる結果」に注目することは、目の前にある事態が、実のところ別のことがらの副産物ではないか、と考えてみる発想にもつながる。何か主たるねらいの結果としてある事態がもたらされたと考えるのではなく、一見それとは全く関係のない事柄の副産物ではないかと疑ってみる。

 →(例)ゴミ袋半透明化によるカラスの増加、凶悪犯罪が起こったのちの交通違反の減少、受験教育批判による学校の補習の廃止が塾通いに拍車をかけた、など

・予言が事態を変えてしまうことで、その予言が外れてしまうこともある。

 →(例)マルクス共産主義革命の予測:1848年に発表された、「ヨーロッパに幽霊が出るー共産主義革命という幽霊である」という有名なことばで始まる「共産主義宣言」は、共産主義革命が起こることが歴史の必然であることを宣言した「予言」の書としての意味合いがあった。 ところが、その予言は、当時の資本家政府の首脳たちに革命の脅威を抱かせた。資本家や政府は、共産主義者を弾圧した。と同時に、革命が起きないために「福祉国家政策」も徐々に取り入れた。労働時間の短縮や賃上げ、工場内の環境改善、児童労働の禁止などの取り組みによって、労働者の生活改善の手だてが部分的に取り入れられるようになった。社会福祉政策の導入によって、貧困層への保護も拡大した。貧困が極みに達して革命が起きるという予言を逆手に取って、革命が起きない手だてがとられた。 その結果、多くの資本主義国では、革命を起こすにいたる深刻な事態が回避された。マルクスが予言したことが、資本家や国家の新たな対応を生み出し、その予言を外してしまったといえる。このような例の場合、予言にはある程度の根拠があった。にもかかわらず、予言したこと自体が事態を変えてしまったと見ることが出来る。

・単に予測や予想があたったか、はずれたかを見るだけでは、ものごとの表面を捉える単眼思考にとどまる。複眼思考をするためには、そうした予想がなされたこと自体が、人々にどのような影響を及ぼしているのかにまで目を向ける。そうすることで、得られた結果が、どのようなしくみでそこにいったのかを、物事の奥行きにまで目を注いで捉えることが可能になる。

・これまで説明してきた方法は、関係の中でものごとの多面性に注目するとか、ものごとの「意図せざる結果」に着目することで、問題を複数の視点から見ようということだった。第3の方法として、問題のとらえ型自体を、もっと根底からずらしていくやり方を説明。すなわち、問題を問うこと自体を問う方法。

・問題の渦中にあって問題に取り組むのではなく、ひとつ違うレベルに立って、当の問題自体をずらしてみること。そのための視点を「メタ視点」という。

・私たちの目の前にあるさまざまな問題には、「つくられる」部分があることに気づく。

・「どうしよう、どうしよう」と目の前の問題ばかりを考えていないで、いったん開き直って、「なぜそれが問題なのか」を考えてみる。すると、この問題が問われる文脈が何であるのかに目を向けることが出来るようになる。

・ポイントは、最初の問いがどのような意味をもつのかを、その文脈にまでさかのぼって考えること。そうすることで、視野が広がる。「なぜそれが問題なのか」というメタレベルの問いを立てることで、当初の問題を広い文脈の中に位置づけようとする視点を持てる。

・「なぜ、それが問題なのか」に着目することによって、ある問題を問題と見なす視点は何かをとらえる。

・ある問題がクローズアップされることで、隠れてしまう問題がないのかに目を向ける。問題の文脈。

・問題の文脈に目を向けるための方法

 →ある問題を立てることで、誰が得をするのか損をするのかに目を向ける

 →当該の問題が解けたらどうなるか、を考える。

・一番大切なこと:ものごとを鵜呑みにしない態度、ステレオタイプ的な解答に出会ったら、「ああそうか」とやり過ごさずに、ちょっと立ち止まって自分の言葉で考えなおしてみるという姿勢。そのちょっと立ち止まった時に、どうすれば自分なりの考え方が展開できるのか。

・自分の頭で考えることはけっして簡単なことではない。自分なりに考えているつもりでも、一つのことにとらわれすぎて、なかなかそこから抜け出せないこともある。そういう時こそ、メタの視点に立つことが有効になる。

・当面の問題を少しずらしてみる。それだけでも、その問題がどのような広がりを持っているかに目がいくようになる。新しい問いが見つかることも少なくない。問いをずらしていく方法を身につけることで、簡単にステレオタイプに飲み込まれない、自分なりの視点を持てるようにもなる。自分の視点を持つとは、自分がどのような立場から問題を捉えているのか、その立場を自覚することでもある。

ユーザエクスペリエンスのためのストーリーテリング

読書目的

 本書の主なターゲットであるWebサービス設計者とは違った視点で読んだ。つまり、業務改善を行う上で、改善される側の組織の人に対して、どうやって改善施策をデザインし(見せて)、グッとくるストーリーを共有して、当人が改善施策の主体者として関わっていって貰えるようにしていくかという視点で読んだ。問題を抱える組織の担当者と、そのマネージャーを橋渡しするストーリーを紡ぎたい。

 

本まとめ

どうすれば良いストーリーを作ることができるのか?

・ストーリーテリングはアートに匹敵する技能

・オーディエンスを理解するところから始める

どのくらいオーディエンスのことを考えるべきか?

・ストーリーのゴールは伝えることではなく、オーディエンスに聞いてもらい、彼らになにか新しいことを持ち帰ってもらうこと

UXストーリーの効果

・ストーリーは人類の魂に深く組み込まれたコミュニケーション形式。多くの情報を小さな空間に詰め込むことが出来る。

ストーリーは聞くこと、そして観察することから始まる

・UXデザイナーは沢山の人から話を聞く必要がある。私達の仕事は、ユーザー、ステークホルダー、同僚といった異なるグループの人たちを結びつけること。

・リアリーリスニングを身につけることは、ユーザーが欲しいとただ口にしたものだけでなく、ほんとうに彼らが必要とすることを見つけ出すために重要なのだ

・リサーチのゴールは他の誰かが持つ視点を理解するということ

・人が話していることのみならず、それを口にする理由に耳を向ける

・ユーザーの”あたりまえ”は話してもらえない(ある機器が冷凍庫で働く人々に使われるものだということは、デザイナーに伝えられていなかった。結果、グローブをつけている彼らには、そのデバイスのキーは小さすぎた)

・人々が話したことと全く別のことをするような例や、簡単だと言っておきながら実際にはそのタスクを完了するのにとても苦労した、という事例で溢れている。

・私達が必要としているのは、中断や聞き手の反感といった脅威を感じることなく、「考えを大声で外化する」ことの許される、私たちの文化において最も価値のある静寂なときなのだ。話を深く聞くということは聞き手から話し手への贈り物なのだ。

・アクティブリスニングのための5つの要素

  1. 注意をはらう。話し手にあなたの絶え間ない注意とメッセージへの同意を伝える。
  2. 聞いていることを示す。ボディランゲージやジェスチャーで、相手に注目していることを伝える。
  3. 繰り返す。定期的に言い換えたり要約したりすることで、話されたことに対する理解を示す。
  4. 判断を保留する。話し手に最後まで話をさせる。妨害しないこと。
  5. ふさわしい応答をする。応答するときは率直かつオープンに。

・あなたのゴールは、彼らが言わなければならないことを自由に話して、他の人はただ聞いているという環境を作ること、そして意識的に聞くということ。メールを読んでたリ、考え事をしていたり、リストにあるタスクを実行していたり、あるいは次に何かを言おうと考えてはいけない。

ストーリーの倫理

・人から聞いて集めてきたオリジナルのストーリーがある。それを他の人に語ることで、最初に話をきいたユーザーとオーディエンスを結びつけることが出来る

・他の人々から得た資料を用いているので、ストーリーだけでなく、その情報源に対しても倫理的な責任を背負う

・表現の簡潔さと明確さに加えて、公正さと信憑性が必要

・純粋な理論や理由は効果的ではない。ストーリーは、非常に効果的で人々に思考やアクションを促す

ストーリーを集める

・聞くということは、ただ調査参加者が選んで話すことばを聞くだけではなく、それをどのように話したか、省略して話さなかったのは何かまでを聞くということ

・短い質問を幾つかする代わりに、ひとつだけオープンな質問をする

・一度「なぜ?」あるいは「それについて教えて下さい」と質問する習慣を身につけることができたら、後はただ彼らについて話してもらうようお願いするだけ。

・インタビューアーとしての仕事は、参加者にあなたが注目していることは何かを知らせ、彼らが話をする時に心地良くいられるようにすること

・当たり前に想定されることについて質問するとき、新しい機会が得ることができる

・もしインタビューの相手がリサーチのトピックから離れてしまったら、そのこと自体が重要な情報源である。脱線した理由を探るために時間を割かなければいけない。

・エコー:相手が最後に発した言葉やフレーズを、そのまま彼らに質問として返すテクニック

・どんなテクニックを使ったとしても、相手が答えるべきことを教えないよう、あるいは勝手に解釈しないように注意する。彼ら言葉を使う。

ストーリーを選択する

・ストーリーを選択するプロセスは、他の様々な分析と同じように反復的なものだ。

・ストーリーは自然に受け入れられ説得力があるので、議論やデザイン変更といったアクションに火をつける

アイデアを生むストーリーの使い方

・自分自身の過去の体験や仮説から、ストーリーを生み出す。

・ストーリーに適するブレインストーミングルールの3つ

  1. 判断を保留する:どんなアイデアも却下しない。どんなアイデアもひとつのよいアイデアであり、どんなに馬鹿げていようが問題ない。アイデアに羽ばたくチャンスを与える前にその良し悪しを判断することほど、ブレインストーミングの精神を削ぐものはない。
  2. 野心的なアイデアを歓迎する:最も独創的な考えはソリューションのキーになり得る。積極的に受け入れる。
  3. 他人のアイデアを足がかりにする:他人のアイデアを足がかりにすれば、そういったクレージーなアイデアを地上におろし、真のイノベーションに変えられる。

ストーリーを共有する

・自分の目的が明確であり、オーディエンスに耳を傾け、自分とオーディエンスの目的とのギャップを埋めるストーリーが見つかれば、うまくいくストーリーの準備は完了。

・最終的に、ストーリーをつくり上げるのはオーディエンス。あなたが提供するのはそのために必要な情報で、オーディエンスの視点や先入観にあわせて提供しなけらばいけない。

・あまりに情報が少なすぎると、オーディエンスはあなたが考えているものとは大きく異なるストーリーを作り出してしまい、オーディエンスとの間に隔たりがてきたり、苛立たせる原因になる。これは、慎重なバランス感覚が求められる作業。

・ストーリーを話しながら、オーディエンスの仕草や顔の表情、コメントに対して注意を払う。そうすることで、ストーリーがうまくいっているか、またはオーディエンスが作るストーリーが意図したものかどうかを確かめることが出来る。

・相手の聞きたいことを尋ねて、彼らの答えに本気で耳を傾ける。

・マネージャーは短くて簡潔なミーティングを好むから、ストーリーのなかで最もインパクトのあることを話すようにする。

・もし新しいアイデアを提案しようとするなら、よく知られた状況に結びつけて話す方法を見つけてください。そうすれば、よりもっともらしく聞こえる。

・ミーティング中に単にアイデアをポロッと出すのではなく、ストーリーによってコンテクストをつくり、アイデアの正しさを説明する。

・並列駐車の画期的なアイデアも日常的に並列駐車の難しさを味わっていない田舎ぐらしの人には響かない

・マネジメント側の人間とストーリーを共有するときは、彼らがストーリーを作った背景ではなく、そのストーリーのもつメッセージに興味があるということを覚えておくこと。彼らは簡単に理解できるストーリーを求めている(主張が明快、ユーザリサーチや他の分析から得られたデータに人間味が加えられている)。

オーディエンスに配慮する

・ストーリーのあらすじが他のキャラクターに注目していても、オーディエンスの目線から話すようする。

・あなたが宇宙の中心でないことを思い出すのは、意外に難しいものだ。

・あなたは自分が多様な関係性を持ちながら集団に所属し、一度に全員の橋渡しをする必要がある。その時は、たとえば、50,000フィートの高さから100フィートの高さまで瞬時に視点を下げるようなモードの切替えを行う必要がある。

・一足飛びでオーディエンスを遠いところに連れて行こうとすると、大抵うまくいかない。この課題を解決するには、全く新しいことを言う前に、既に話していることを描写するストーリーから始めることが有効

・オーディエンスは、各自が自分の視点でストーリーを聞いている。

・オーディエンスとあなたの関係や、ストーリーのコンテクストについて両者が知っていることは何かを考える。

ストーリーの構成要素を組み合わせる

・「盲目の男たちとゾウ」の例え(触るパーツによって、ゾウのとらえかたが全く違う)

・ストーリーの視点を選ぶということは、すべての経験の中の、特定の部分を抜粋するということ。

・視点を定めるひとつの方法は、ストーリーに表現したい目的や考え方について検討してみること。

・ストーリーのコンテクストを設定する際、ストーリーが長くならないように、ユーザが想像で補える部分は削って、ストーリーを主張するために重要なディテールだけを残すとよい。

構造とプロットを作る

・慣れ親しんだ構造を使えば、ストーリーをつくるのが容易になり、聞き手の理解も深まる。

・まず最初に構造に必要な機能は、誰かが助けを必要としていたり、解決すべき問題があるような状況。

・ストーリーの中盤では、試練に立ち向かい、そして遂には試練に打ち克つ。

クリストファー・アレグザンダーの「パタン・ランゲージ」のなかで、建築の構成要素は、クリエイティブな方法によって、際限なく再配置・再利用できると考えていた。

・オーディエンスがストーリーの構造を理解することができれば、彼らは1段上のレベルでストーリー理解することが出来る。ストーリーの流れがイメージできると、オーディエンスは、ディテールに集中してストーリーを聞くことができる。そうすれば、オーディエンスがストーリーの展開を推測するために無駄な時間をさく必要がなくなる。

・構造をつかうことで、何が次にくるべきか、何が不足しているのか見つける手がかりになる。

・ストーリーは時系列に従う必要はない。ビジネスパーソンに対しては、ストーリーの結末を最初に伝えた方がより効果的かもしれない。彼らはずばり要点を言うスタイルの方に慣れているから。

・常に真実味があることが重要

・オーディエンスは「これが本当なのか?本当にありえるのか?私はそうは思わないけど、どうなんですか」と考えだすことはけしてない。オーディエンスが心のなかでそのような質問をする時、あなたはすでに彼らの関心を失ってしまっている。もっともらしさはストーリーの各場面ごとに評価されていく。

・UXストーリーのゴールは、オーディエンスのもっともらしさに対する感覚を変えて、新しいアイデアの可能性を開くこと。ユーザーエクスペリエンスやビジネスのストーリーはもっともらしさにかかっている。もっともらしさは信頼に繋がり、リスクを低減する。

・適合性:ストーリーは事実と合っているか?無理やり当て込んでいないか?

・独自性:説得力のある説明か?あるいは、他にも似たような話がたくさんありそうか?

・オーディエンスの創造性:オーディエンスが自らディテールを組み立てることが出来る余地があるか?あるいは、ディテールが詳しすぎてオーディエンスの想像の余地を奪っていないか?

・定義された構造で取り組むと、ストーリーを繰り返し語るのが容易になる。

・もしストーリーがとても明快であれば、他の人もそのストーリーを話そうという気になる。

・美しく作り上げられたストーリーは、単なる寄せ集め以上のものになる。

・馴染みのあるものから見慣れないものへ:オーディエンスが慣れ親しんだ心地よい話から始め、次第に新しい、見慣れない話を展開していく構造。

・フレーム化:始まりと終わりが同じように見える構造のストーリー

ストーリーの伝え方

・あなたはオーディエンスが体験するストーリーの一部なのだ。

・自分でストーリーを話す利点:ストーリーを聞いているオーディエンスを直接見ることが出来る。オーディエンスからの質問に答えるためにストーリーのディテールを追加したり、時間が超過しそうなときに、ストーリーの長さを短縮することが出来る。彼らの表情やボディランゲージを手がかりにして、ストーリー上の誤解を招きそうな部分を補足したり、集中力が低下したりしそうなポイントを省略して話すことが出来る。

・オーラルストーリーは「ダイナミックで対話的、感覚的」であり、ただ読んで話すだけのスピーチとは違うのだ。

・話し言葉は、書き言葉とは対照的なリッチなメディアで、意味を伝えるために言葉や声のトーン、表情、ジェスチャー、姿勢、視線、距離、間合いなど、書き言葉より多くの要素を使うことが出来る。

・言葉では間違いないことを伝えているが、姿勢や声のトーンからはためらいを感じさせ、目の動きは「いつバレるか」と恐れを発しているようではダメ

・プレゼンの準備を完璧にするためには、リスナーの前で練習する必要がある。そして、最も効果的な言葉やトーンなどを全て確認するようにして、オーディエンスとラポールを築く練習をする。

・プレゼンのセリフを暗唱するつもりなら、それはオーディエンスを無視してることになる

・練習、練習、練習

・リハーサルすることをお勧めする。ストーリーを話す準備をするためには、ストーリーとともに過ごす時間が大切なのだ。

  • ストーリーを数回読む
  • ストーリーの魅力を分析する
  • ストーリーの背景や文化的意味を考える
  • ストーリーとうまく付き合う
  • 視覚化する:音や味、香り、色の感覚を想像してみる。ストーリーを話しながらこうした感覚を頭の中でイメージ出来れば、あなただけでなくオーディエンスにとっても、ストーリーにリアリティが出てくるだろう。あなたがストーリーをいきいきと描くことが出来れば、オーディエンスも同様にストーリーをいきいきと思い描くことが出来る

・オーディエンスが退屈してしまうのではないかと不安に思って、ストーリーをうまく提供することが出来ないにも関わらず、早口に喋ることはストーリーにとってはよくない。

・オーディエンスにとって適切なペースでストーリーを話すこと

・ペーシングは、ストーリーの特定のポイントで細かな話題から全体の話題に戻るときに使うと良い。

・ストーリーのある場面では、ほんの一瞬の出来事にフォーカスし、時間をかけて解説するかもしれない。またその一方で、話を飛ばしてずっと先の内容に焦点をあてる場面もある。

・沈黙を恐れてはいけない;オーディエンスが頭の中でイメージを描けるように沈黙をうまく利用する。

文書のストーリー

・不必要な説明や補足コメントはなるべく避ける

・イラストやその他ビジュアル要素、および余白を効果的に使うことによって、各ページでストーリーにペースを与える

 →楽しんで仕事をする。ストーリーボードは作成するのも共有するのも楽しい。

 →目を引くコミュニケーション手段を使うことによって情報に興味を持たせる

・ビジュアルを使用することでストーリーにコンテクストや文化的な背景を加えることができる。

・ビジュアルはストーリーに深みを与えることが出来る

・プレゼンテーションは三幕のストーリー(スライド例:http://www.slideshare.net/themoleskin/crucial-conversations-in-social-media)

  • 第一幕:ストーリーの設定:アネクドート(小話)や設定、主人公、不均等、バランス、およびソリューションをオープンにする
  • 第二幕:問題を展開する
  • 第三幕:ソリューションを説明する
  • 第四幕(任意):アクションにつなげる

・プレゼンテーション全体のストーリーができてから、スライドの作成を開始する。そうでなければ、まだスライドを作り出さいこと

新しいことに挑戦する

・よいストーリーを話すためには、まずオーディエンスに興味を持って聞いてもらうための方法を考える

・私たちが日常的に使っているグラフや図、また理性的な議論には限界があり、対話を重ねていくことこそが効果的である。しかしその対話も、大きな変化に対応するためには実用的ではなく、ストーリーテリングだけが、リスナーの想像力を喚起させ、沢山のことを伝え、納得してもらうことが出来る。

・ストーリーテリングの活用ブログ:http://rosenfeldmedia.com/books/storytelling/blog/

 

財務とは何か

読書目的

僕にとって経理はいかにも退屈そうな分野で、興味は微塵もなかったが、仕事で経理業務に関わることになったので、本書を手にとった。

経理業務が経営者に提供する情報は何か、財務の本質とは何か、これらを読書の目的とした。

結果、退屈だと敬遠していたのは大きな間違いだった。3つの財務諸表セットがいかに経営の武器になるのかを知り、そして、財務諸表の有効な読み方も知らずに株投資をしていた自分の行動があまりにも向こう見ずな行動だったと思い知った。経営に関わる方、投資家の方は一読したほうがいい。

 

本のまとめ

序文

・本書は会計についての本ではない。

・事業を経営するのに、会計士になる必要はない。経営者としては、会計士(そして会計ソフト)から与えられた必要な情報の処理方法を知っているだけで十分。

・財務諸表をを切り離してみたのでは、決して十分な結果は得られない。3つの財務諸表がどのように統一体として調和するかをこの本は示す。

 

第1章 会計に関する二つの議論

・税務署に提出しなければならない情報は、会社を効率的に経営するために必要な情報とは違う

 

第2章 バランスシート

・顧客が会社に支払債務を負っていれば、その債務額は会社の資産とみなされる

・原価償却累計額は、その原価の中でどれだけのものが前年度までにすでに配分されたかを示す

・強いバランスシートがいいとは限らない

 →大きな現預金:なぜその現預金はもっと有利に再投資されなないのか?

 →資本に対して相対的に高い負債の会社:借入金を有効に活用して、そうでない場合よりも多くの利益を生み出しているかもしれない

・バランスシートはスナップ写真。それが描く図は、ある程度まであなたがいつシャッターを押すかによる

・バランスシートでは会社の現金がどこから生み出されたか、また、会社が健全なキャッシュフローを有しているかはわからない

 

第3章 損益計算書

・損益計算書は、会社取引の約束と契約の部分だけを追跡する。現金に関するものではない。

・各商品の費用の計上タイミングはそれを購入した月ではなく、その商品が売れた月である。

・大抵の損益計算書は発生主義の原則に基づいている。発生主義の損益計算書は、現金が実際に移転したかどうかに関係なく、一定期間(仮に4月とする)の売上と、4月の売上に関連した費用を明らかにする。

・バランスシートがスナップ写真のようなものであるなら、損益計算書は映画に似てくる。一定期間に何が起こったかをそれは告げる。

・発生主義損益計算書においては、売上が回収されることが売上計上の条件ではない。他方、顧客が注文を出した時点で売上を計上することは通常は出来ない。計上には実際に商品やサービスを提供することが必要。

・売上高は収益と呼ばれることがよくある。しかしその数字は、どれだけの現金があなたの銀行口座に流れ込んだのかを示すものではない。そして、売上原価は、あなたが売ったものの原価を会計士が計算できる限りにおいて正確に示してくれるというレベル。

・減価償却はただの数字(会計士はそれを非現金費用と呼ぶ)。

・損益計算書は「抽象概念」である。

・損益計算書はあなたの提供する商品やサービスに関して、すべての原価と費用を考慮に入れた場合、あなたは収益を上げているかどうかをそれは明らかにする。しかしそれは実在のものではない。

 

第4章 キャッシュフロー

・銀行口座にどれだけ預金し、小切手をいくら切り、ある特定期間に現預金残高がどれだけ変化したかを知らせてくれるもの。

・損益計算書がキャッシュとはなんの関係もないように、キャシュフロー計算書は約束や契約、すなわち発生主義とは何の関係もない。それは、実際に何が流入し、何が流出するかを示す。

・損益計算書のように、キャッシュフロー計算書は一定期間における出来事を映し出す「映画」のようなものだ。それはあなたの事業の中で起こったことのもう一つの側面、すなわちキャッシュサイドを明らかにする。

・会社が現金を生み出す方法は3つしかない。それは、営業活動、資産売却、貸し手と投資家(借入または株式売却)による。

 

第5章 3つのボトムライン

・財務諸表の完全なセットは、強力なレンズのセットのようなもの。レンズのいくつかは広角であり、会社の全体の成果がどうなっているかをあなたに教える。他のレンズは画面をクローズアップしてくれ、売上債権が増加傾向にある理由など、現実の細部についての理解を助けてくれる。

・3つのボトムライン:純利益、営業キャッシュフローROA

・純利益の測定値としての欠点:どれだけの現金が実際に銀行口座に入るかを知ることが出来ない。売上債権が増加しているかもしれない。在庫品に必要以上にものを使っているかもしれない。利益がすべて売上債権と在庫品にしばられているなら、あなたは現金不足に陥り、見かけ上は儲かっていても営業を中断しなければならないかもしれない。

・測定基準値としての利益のもう一つの欠点:会計操作による歪曲の影響を受ける。会計士が純利益を計算するときは、多くの場合、減価償却費計算と棚卸資産評価について、規則に適った様々な方法を選択することが出来る。彼らがどの方法を選択するかによって利益は変化する。

・損益計算書は抽象概念だ。従って利益もまた抽象概念なのだ。

・営業キャッシュフローは、会社に流入する賞味現金がいくらあるかを示す。

・純利益とは異なり、営業キャッシュフローは会計理論ではなく、現金の流入と流出という実際の出来事に基づくもの

・一般的に、営業キャッシュフローは純利益より一貫して大きくあるべきだ。

ROAの計算例:期首の資産が100万ドルで期末の資産が120万ドルなら、その年度の平均資産は110万ドルである。その年度における純利益が10万ドルだったとすれば、ROAは10万ドル÷110万ドルで、約9%である。

ROAはとてつもないボトムライン:それは純利益を含み、したがって売上と費用の管理がうまくいっているかどうかを表す。それはまた、売上債権や、棚卸資産、固定資産などの資産の管理がどれほど効果的に行われているかをも示している。

ROAの欠点:分子(純利益)は抽象概念だという欠点を持っている。分母(平均資産)は、会計士による棚卸資産評価法、同じく、固定資産減価償却法、等々のいかんによって決まる。

・効果的な企業評価のためには、3つのボトムラインを示している財務諸表の少なくとも三年分が通常必要である。それによって、純利益、営業キャッシュフロー、および資産利益率を時系列に図示することが出来る。

 

第6章 財務スコアボード

・ある時点のバランスシートと次の時点のバランスシートとの間に起きるほとんど全ての変化は、損益計算書とキャッシュフロー計算書から適切な数字を取り出して、それらを加減することによって説明することが出来る。

・財務スコアボードは、会社の財務諸表の鳥瞰図を一見して理解させてくれる。原因と結果の関係を示す。

 

第7章 3つの財務目標

・財務分析の目的:事業をもっと効果的に経営し、財務目標に到達すること

・重要なことは、あなたが自分の目標は何かを知っていることだ。

・強いバランスシート:資本に比して債務がそれほど大きくない

 

第8章 最適業績のための経営:純利益

・自分の会社の財務諸表を月末か四半期末に受け取って、ただ一瞥をくれるだけの企業オーナーや経営者があまりにも多い。

・会計士が作成した財務諸表は、完成品ではない。仕掛品なのだ。道具なのだ。それはあなたの事業の分析のための出発点である。その分析を賢明な方法で行うにはどうしたらいいかが重要である。まず、損益計算書からはじめる。そこでのボトムライン(最終行)は純利益である。

 →損益計算書の基本:一番目の勘定科目は売上高または収益。二番目の科目は、売上原価かサービス原価。次は一般管理販売費:非製造間接費などの費用科目

 →あなたの会社の業績と同じ業界の似たような会社の業績と比較する。同業組合や業界紙からも知ることが出来る。同一産業内の上場会社の財務諸表もまた有効な比較材料となる。

 →損益計算書を比較するときの有用な方法は、すべての類目を百分率で最計算すること。すなわち、各科目は売上高の何%になっているか。そうすれば、会社間の業績の相違を金額数字の乖離に関係なく、ひと目で把握することが出来る。

 →比率評価の第二の方法:あなたの会社の業績を以前の年度と比較すること。3年以上にわたってその比率は上昇しているか?

 →大切なことは、分析を的確に行うことである。最初に、どの数字が会社の財務諸表に最大の影響を与えているかを見つけ出す。次に、変化の著しい数字を見つけ出す。ある勘定科目の変化が大したことはなく、そんなものでいいのだと思うときは、無視する。問題の根源になっているかもしれない数字に集中する。大きい数字にまず注目する。

・事業経営において、一時的に純損失を出すことは過ちではない。純損失が意図的な戦略の一部分でかつ、そのマイナスをプラスに転換するためのよく練り上げた計画を持っているなら、予定を上回る損失を出していないかぎり、心配する理由は何もない。

・売上原価が売上高よりも速いペースで増加してる→あらゆる製品で一律にそうなのか?それともわずかな製品に限定されたことなのか?

 

第9章 最適業績のための経営:営業キャッシュフロー

・営業キャッシュフロー:損益計算書に記録された抽象的利益は現金に変えられるものであるかどうかを教えてくれる。あらゆる企業オーナーにとって注目すべき最重要な勘定。

・営業キャッシュフロー(OCF)の健全性テスト

  1. OCFはプラスか。OCFはプラスであるべき。
  2. OCFは純利益よりも大きいか。もしOCFが純利益より小さいなら、あなたは利益を現金に変えることになぜ成功していないかを見つけなければならない。
  3. OCFは固定資産投資よりも大きいか。大きければ投資資金を社内で賄っていることになる。外部資金調達に頼らなければならない会社よりも強い会社である。
  4. OCFは純利益と同じ方向に向かっているか。3年間の計算書を取り出して比較せよ。純利益が上方に向かっているのに、OCFが下方に向かっているなら、あなたは問題を抱えている。

・純利益は抽象概念だ。損益計算書の全体が抽象概念なのだ。純利益は企業取引の一つの側面に過ぎない契約部分の結果を示している。

・利益のうち、売上債権に拘束されている部分が過大かもしれない

・利益のうち、棚卸資産に拘束されている部分が過大かもしれない

・請求書の支払いが必要以上に(売上債権の回収より)、早いのかもしれない

・会社のOCFが純利益と比べて劣っている場合は、経営者は売上債権もしくは棚卸資産またはその両方の管理を満足に行なっていない

・売上債権回転日数:売上債権を回収するのに要する日数の平均値

・売上債権の見かけ上の穏やかな成長はOCFに対して恐ろしい結果をもたらし得る

棚卸資産回転日数:期間内に棚卸資産が何度回転するか

棚卸資産回転日数が90日:平均して会社の商品は販売されるまでのあいだ3ヶ月近く店に寝ていることを意味する。

棚卸資産回転日数が高く、マイナスOCFの場合に取ることの出来る手段

  1. 棚卸資産記録が正確であることを確かめる
  2. 価格面で有利な取引にだけ気を取られ、在庫として抱え込むことと現金の固定化によるコストを忘れてしまうような大量買付けをしていないか
  3. 供給業者との共同作業を心がけ、なるべく少ない在庫で運営する
  4. 売上予測能力を高め、必要な在庫を減らす

・完成品棚卸資産は、原材料に付加された全ての価値を含んでいるので重要な管理項目になる。完成品を床の上に積んでおくことは、より多くの費用が掛かることを意味する。

・貧弱なキャッシュフローは多くの問題から発生するが、殆どの場合、売上債権と棚卸資産の拙劣な管理から発生する。

 

第10章 最適業績のための経営:資産利益率

ROAが重要な理由1:会社の内部的財務管理に役立つ

 →機械工場を経営しているとすれば、機械の半分が稼働していない状況を良しとしないだろう

 →売上と利益は健全らしく見えるが、余力以上のものを固定資産につぎ込んでいないかを確認出来る

 →ROAは全体としての資産管理が巧くいっているかどうかを示すもの

ROAが重要な理由2:会社業績を外部世界に繋ぎ止めるのに役立つ

 →あなたの顧客や、債権者、投資家などがあなたに渡す金をあなたはどのように使っているかをROAは示す

ROAを比較するときは、ある業界内での会社規模の大小は問題にならない。あなたが経営しているのが小さなレストランであれ、ROAはレストラン業界平均と同等でなけれればならない。

・事業を運営するのに十分な現預金を必要とする。しかし、それを「十二分に」持つ必要はない。なぜなら、あなたは利用可能な資源を活用していないことをそれは意味する。

 

第11章 比率のマジック

・資産に対しては必ず誰かが請求権を有しており、その請求権はバランスシートのもう一方の側に現れる。請求権の幾つかは、売主や、銀行その他の貸し手、政府などの債権者が持っている。これらの人々は会社が金を支払わなければならない人々であり、彼らの請求権は「負債合計」に集計されている。これ以外の請求権をもっているのが会社オーナーである。会社オーナーは残された一切のものを所有する。すなわち、資産合計 ー 負債合計 = 資本。

・資産と資本の差額は他人の金である。

・会社は利益を上げるために他人の金を使っている。その資産は資本よりも大きい。重要な問題は、他人の金を「どれだけ」使っているかということと、慎重にかつ生産的に使うことができるかということである。

・ROS(売上高利益率:純利益 ÷ 売上高):原価と費用が売上高よりも早く増加していないことを確認。

・資産回転率(売上高 ÷ 資産)。資産回転率の管理は、資産の増加よりも売上高の増加を速めるか、もしくは資産を減少させるか、またはその両方によって行う。最重要測定値は売上債権回転日数と棚卸資産回転日数である。

・財務レバレッジ(資産 ÷ 資本)。資産 ÷ 資本比率自体は、他人の金をあなたは有効に利用しているかどうかを教えてくれる優れた道具。それが1.0に近ければ、あなたの経営は慎重すぎると言える。債務をもっと背負いこんでもいいかもしれない。それが3.0より高ければ、危険域に踏み込んでいる。

ROE自己資本利益率:純利益 ÷ 資本):多くの投資家にとって究極の財務測定尺度である。この事業に投資するのと何か他のものに投資するのとで、投資家にとってはどちらが長期的に得策かを示している。

ROAグラフとROEグラフによる計画:現在のROAと目標とするROA比率(%)を示した曲線(X軸:資産回転率、Y軸:ROS)との最短距離を見つけてそれを書き込む。それに従った資産回転率とROSを計画値とする。

 

第12章 先を見る財務会計

・計画を持てば、会社の進展を月毎に計測する基準を持つことが出来る。何かが軌道を外れても、早期に問題を発見し、時間内に修復する事ができる。

・重大なつまずきが発生した場合には、緊急用の計画を作ることができる。

・過去の会社業績を知らずして今年度末のあるべき姿を書くことは出来ない。

・あなたがどんな方法を取ろうと、鍵となるのは具体性である。

・良い売上計画は、製品ごと、顧客ごと、地域ごとに基礎から積み上げて作らる。

・大半の会社が、売上の増大、原価と費用の削減、新製品や新サービスの導入、新しい設備の取得、売上債権の早期回収など、実に多くのことを単年度にこなそうとしている。これらの全ての目標を一気に達成しようと目論む計画を立てようとすれば、あなたの会社にとって今年度成し遂げるべき最も重要なことを見失うことになるだろう。

・売上高利益率(ROS)が低く、次年度のROSを高めることが優先事項の一つとなることを、通常経営資産が示しているものとする。その場合は、売上原価/売上高と、一般管理販売費/売上高を分析し、

 →1.どちらの比率がROSに大きな影響を及ぼすか

 →2.どちらの比率により大きな改善の余地があるかを見極める

・幾つかの改善を提案し、それらを書き込む。試算の結果、現金に不足をきたすことがわかったら、財務スコアボードにより低い売掛金か棚卸資産の数字を書き込んで、その結果現金がどうなるかを診てみよ。その新しい現金の数字に満足し、かつ売掛金もしくは棚卸資産またはその両方の数字が現実的なら、いかにして代金回収を強化するか、または、いかにして在庫を減らすかについての計画作成にあなたはとりかかることが出来る。

・あなたの試算が乏しい純利益を示しているなら、売上原価であれ、一般管理販売費であれ、会社にとってより重要な方について、より低い数字を書き込んでみよ。そして、その低い数字の達成が現実に期待できるものかどうかの検討を始めよ。

・最良のケースと最悪のケース、及び予想シナリオを作成せよ。どんな計画でも、変わらないものと変わるものについての数多くの仮定を組み込んでいる。

・いったん12ヶ月計画を作ってしまえば、それを12の月別計画にぶんかつすることは難しいことではない。

・これらの見積もりに基づいて、年度内の毎月(少なくとも四半期毎)の損益計算書、キャッシュフロー計算書、バランスシートを作成することが出来る。各期間についての計画を持つことによって、あなたは進行しながら途中経過を知ることが出来る。

・計画を変えてはならない。環境が変わる度に計画を変更していたのでは、あなたは評価基準というものを持てなくなる。あなたがいましていることが、計画を固守した場合より良い結果を生むか、悪い結果を生むかについてもわからなくなるだろう。年度末になって、計画がいかに適切であったかも知ることが出来ないだろう。

・一旦計画が立てられたら、それを変えるな。環境変化が甚だしい場合は、残りの期間について新しい一組の数字をつくれ。それを新しい数字と当初計画の両方とで比較せよ。

・「高度参加型計画策定」:人間は、自分たちが理解し、設定に手を染めた目標の達成については、より強い熱意を示して協力する。

 

エピローグ

・財務諸表は会社を経営するときにチェックする唯一の数字ではない。しかし、それらは最も重要なものの部類である。財務数字によって、あなたは何が起きつつあるかを知ることが出来る。問題を確認し、分析することが出来る。効果的に計画を立て、計画の実行段階で、途中経過を知ることが出来る。これが本書を「数字による経営」と呼んだ所以である。

・「数字による経営」と言うと、それはドライで、冷血に聞こえるかもしれない。だが、競技のことを考えよう。競技が数字によって支配されていることは議論の余地はない。得点、時間、率、平均値。スポーツはドライでも冷血でもなく、まったくその反対だ。数字自体はドライでも冷血でもないということだ。

・数字はただの道具で、測定値にすぎない。重要なのは、数字が表す活動である。そして、我々が事業と呼ぶ活動は、スポーツとまったく同じように刺激的である。目標を設定して、それらの達成仮定での進展を追跡することほど意欲をかきたてるものはない。事業が成功すれば、それは富を生み、雇用を増やし、人々が必要とする製品とサービスを提供する。成長し、利益を上げる事業はすべての人にとっての更なる機械を意味する。

・そこで提言がある。あなたが財務成果の追跡と、財務目標の設定を学ぶときには、みんなを参加させよ。その目標をホワイトボードかイントラネットに掲げ、毎週、毎月、四半期の途中経過を図示せよ。このような経営は職場に遊びと興奮を付加する。

 

財務用語解説となぜ専用の用語集が必要かの理由

・会計士や財務関係者は、財務諸表上の同じ概念や項目に関して異なった用語を使用することで悪評を買っている。

・会計士やマネージャー、従業員とコミュニケートするときは、あなたの「専用財務用語集」を使い、決してそこから脱線するな。コミュニケーションは非常に明確になり、従って大変易しくなる。

私が会社を変えるんですか?

読書目的

自分が取り組んでいる仕事でもある業務改善の現場を、経験型の書籍でリアルに追体験するため、また、そこから実践できること盗み取るため手にとった。

欠点を一生懸命に補うアプローチは100点を目指すことでしかない(しかも100点を取るのは往々にして難しい)、そうではなく強みや長所に目を向けて、200点でも300点でも目指そうというAIの発想に強く惹かれた。

自己変革なくして風土改革なし。

 

本のまとめ

第一章 ある組織変革の挫折と成功

・社長の威光をカサにきて、コンサルが作った借り物を、上からああしろこうしろと言ってくるエリート集団。それが一般社員にとっての業務改善プロジェクト。

・社員たちがチェンジエージェントや業務改善プロジェクトメンバー「エリート」とみなし、役員たちが「社長直轄の煙たいやつら」とみなしているのと同じように、こちらも相手を上から見下ろして、理解の悪い相手をなんとか導いてやる、という気持ちになっていないか。

・「ダメな会社を救世主たる自分が変えてやる」という態度は「傲慢」

・あなたは、自分が正しいと思うことを、周囲に押し付けていないか? 「押し付け」ではなく「対話」を

・組織改革は「社員一人ひとの気持ち」「感情」「生々しさ」などを視野に入れずには不可能

・議論中、どこか釈然としないふうのメンバーがいれば、「君、何かある?」「納得いってないようだけど?」と問いかける。つまり、メンバーの意見を徹底的に引き出す。

・「指示待ち風土」:仕事の仕方は上が決めるもの、と思い込んで自分から動かず、だんまりを決め込んでいる。

・「守旧風土」:変化の激しいIT業界に身を置きながら、今日と同じ業務を明日以降も続けていければよい、とかん違いしている。それではダメだとわかっていても、うっかり提案をすると言い出しっぺにお鉢が回ってくるのを恐れて黙る。

・不満は望みの潜在形、不満の裏の希望を引き出す

・意識しなくてもコミュニケーションを取れるようになる:メールに頼らず、可能な限り直接話し、最後まで聴く

・コンサル依存を脱却し、自分で考えること→ネガティブ思考を脱却し、自分の属する組織の良さに目を向けること

・人を動かす愚直さ

・不満を吸い上げてそれを解消する工夫を続ける・・・一見あたり前に見えるプロジェクトの作業は、じつは「欠点がとくにない状態」を目指しているにすぎない。

 

第二章 組織改革の「罠」に陥っていないか

・組織改革という「集団の有機的変化」は自発性に基づいて行われるもの。一人の人間が上から呼びかけたり、外部の人間がアドバイスを行うことも「援護射撃」としては必要だが、それは本質的な部分ではない。

・チェンジエージェントの真の覚悟:「どんな会社であっても、どんなにやる気のなさそうな社員であっても、「必ず可能性がある」と信じること」

・組織改革の壁:「セクショナリズム」自分が統括する部門・部署のメリットを第一とする考え方

・コンサルのメリット:社員たちがしがらみや利害関係にとらわれて言い出せないことでも、客観性を持って遠慮なく問題点を指摘してくれる。煮詰まりがちな議論を打開し、社員同士の駆け引きを超えた解決策を提示する。

・イギリスの政治学者パーキンソンが提唱した、「パーキンソンの法則」。いわく、「会議にかかる時間と、討議される案件の予算は反比例する」

・なぜうまくいかなかったのかーこの問は、他者に向けてはいけない。コンサルタントが悪い、社員が悪い、プロジェクトが悪いと言うのではなく、辛くてもまず「自分の姿勢はどうだったか」を考えるとき、学ぶ力はアップする

・変革は1つの生物である。花を突然実に変えたり、赤ん坊を突然大人に変えたり、などというコントロールはできない。できることは水をやったり肥料をやったりとサポートすること。命が育まれていく過程をゆっくりと見守り、邪魔をしないこと。「早ければ早いほどいい」という考えは捨てる。

・重要なステークホルダーに対しては、とにかく「敬遠しないこと」が大切。「決済前に、意見を聴く」などの根回し、「統括部署の悩みを吸い上げておく」などのフォローが彼らの信用につながる。

・コンサルが問題を指摘して、外から指示しても変わらないのであればすべきことは何かー「ファシリテーション」。会社が変わる原動力は「自発性」と「心」。つまり会社の力を引き出すためには、社員の相互コミュニケーションの活性化を図り、そのために力を注ぐ存在が必要。そんなときに、社内の利害関係から自由な存在であるコンサルが能力を発揮できる場面。こうしたファシリテーター型のコンサルが養成され、活躍するようになることが、日本企業にとって、どれだけ有益か計り知れない。

 

第三章 AIで組織は必ず変わる・伸びる

・AI:appreciative = (形容詞)進化を認めるような、inquiry = (名詞) 探求/発見/問いかけ

・AIは、会社の問題点を一切追求しない。反対に会社のもつ「良いところ」「長所」「可能性」にスポットを当て、社員一人ひとりにそれを問いかけながら引き出す。

・「組織を良くするには、欠点を探し出して残らずそれを解消することだ」という発想は一見合理的に見えるが、これは「欠点のない状態」=「百点」という枠を自ら設定し、縛り付けることにつながる。さらに「百点」は欠点を排除しても排除しても、なかなか到達できないのが現実。

・「何が問題なのか」という問いは「誰が悪いのか」へと繋がる。欠点追求はともすれば部門攻撃、個人攻撃へとシフトする。

・我々は「ネガティブなこと」には敏感に反応する。しかし「ポジティブ」に目を向ける習慣はまだ育っていない。この会社の強みは? 隠れた可能性は? と皆で真剣に探し求めることは、我々には「慣れない作業」。これは自分のことに関しても同じ。「あなたの強みは何か」と言われて、すぐにとうとうと答え始めるひとはあまりいない。「自分の強みを真剣に考えたことがない」のだ。ついネガティブ要素に引き寄せられる視線の先を、あえてポジティブに向ける。

・犠牲的精神に基づいた努力は継続せず、どこかで息切れを起こす

・CSからES(Employee's Satisfaction):社員一人ひとりが生き生きと満足して働いていれば、彼らはくもなくCSにつながる試みにトライし続ける

 

第四章 組織を変えるための実践アプローチ

・AIの実践:4Dサイクル:Discovery=潜在力発見、Dream=理想像構築、Design=変革設計、Destiny=変革実現

・Dream(理想像構築):ポイントは「過去形」で語らせること。あたかも既に起こったことであるかのように語ると、言葉の上だけでもやりとげた自分の立場に立てる。すると物の見え方がガラリと変わる。

 

第五章 AIをさらに活用するためのヒント

・問題解決ではなく理想実現

・あえて「問題」を追求するのではなく、「まず理想のビジョンを描く」ことから始めるほうが組織開発では遥かに効果的

・スポーツ選手が行う「イメージトレーニング」でも決して失敗のイメージを描こうとはしない。

・失敗をなくそうと思えば思うほど、失敗は増える。「強み」「持ち味」「可能性」に着眼してそれを伸ばそう、とすることで組織は「失敗」のイメージから脱却できる。

・自発性が喚起されることで一人ひとりのコンピテンシー(職務遂行能力)がアップする

・コンサルタント:どの会社に出入りしても、専門知識や技能を提供できる人。社内の人間にはわからない理論やスキルが、様々な会社に赴く彼らの武器。逆にいえば、よほど説得力のあるデータやクオリティの高い進言が出来なければ、良いコンサルにはなれない。

世阿弥は、ものの学びには「守」「破」「離」の3段階があるという教えを遺している。「守」:師匠の手本を寸分違わずなぞり、体に叩きこむ、「破」:自分にあった方法を、試しに行おうとしてみる、「離」:その試みも含めて、完全に技が自分のものとして体得される。

・環境は岩のように硬く頑なだったが、自身が変化した途端、音を立てて好転しはじめた。自己変革なくして風土改革なし。

 

世界一やさしい問題化解決の授業

読書目的

SIerからコンサルファームへの転職し、同僚のコンサルとの思考回路にギャップを感じることが多く、これはマズいということで手にとった。遠い昔に読んだMECE、ロジックツリーなどの思考法の基礎を復習する。 あるコンサルファームでは「これを100回読め」と手渡されると聞いた。

本のまとめ

問題解決能力を身につける

  • どんなに大きく複雑な問題でも、いくつかの小さな問題に分解すれば解ける
  • 具体的な目標を持ち、考えぬいて生きる→自分がとった行動とその結果から、毎回何かを学ぶ
  • 成功した時:どうやったらもっと良くなるか?、失敗した時:何が問題だったのか、どうすれば同じ失敗を起こさないか?を考えぬいて、次に活かす。最初は少しの差でも、積もり積もれば大きな差。 
  • 問題解決とは、「現状を正確に理解し」「問題の原因を見極め」「効果的な打ち手まで考え抜き」「実行する」こと。
  • 問題解決には、【分解の木】が役立つ。どのような原因があるかをモレなく探しだす、どんな打ち手があるかアイディアを幅広く、具体的に洗い出すときに重宝する。また、絵に書くとアイディアが出てくる。

問題の原因を見極め、打ち手を考える

  • 1 原因を見極める 
  • 1-A 原因としてありえるものを洗い出す
  • 1-B 原因の仮説を立てる
  • 1-C どんな分析をするか考え、情報を集める 
  • 1-D 分析する 
  • 2 打ち手を考える
  • 2-A 打ち手のアイディアを幅広く洗い出す 
  • 2-B 最適な打ち手を選択する
  • 2-C 実行プランを作成する 原因の洗出しはモレと重複がないように分類、分析する 
  • 【課題分析シート】:何を調べる必要があるかを明確にする。
  • 「具体的な課題は何か」「現時点での仮説とその根拠は何か」「仮説を確かめるには、どんな情報を集めて分析する必要があるのか」を明確にすると、問題解決の確率はグンと上がる。ダブり、モレも防げる
  • 仮説と調査結果が違うことは、よくある
  • 仮説だけを信じて打ち手を考え、動き始めてしまったら、間違いに気づいてもやり直せない→仮説を立てたら、きちんと効率よく調査して分析することが必要
  • 打ち手のアイディア洗出しのポイント:「ありえないでしょ」とすぐ可能性を否定するのではなく、いったんは考えつくもの全てを洗い出す
  • 本当に実現できるかどうか、効果的かどうかは、一度アイディアを出しきってから、優先順位をつけ、絞り込む
  • 「効果」×「実行のしやすさ」の2軸分析で打ち手の実行順序を決定

目標を設定し、達成する方法を決める 

  • 1 目標を設定する 
  • 2 目標と現状のギャップを明確にする 
  • 3 仮説を立てる 
  • 3-A 選択肢を幅広く洗い出す 
  • 3-B 選択肢を絞り込んで仮説を立てる 
  • 4 仮説が正しいかチェックする 
  • 4-A 仮説に沿って情報を集める 
  • 4-B データを分析し、チェックする 
  • 目標は達成しなければ意味が無い。「何を」「いくらのものを」「いつまでに」「どうやって」など、なるべく具体的に決めることが重要
  • 実際に書き出してみること。「どのような」「いつまでに」「どうやって」「何のために」など、自分で自分に質問をしながら書いていく。 
  • 【分解の木】を作るときは、完璧な木を作ることにとらわれないこと。目的はあくまで、【分解の木】を利用して具体的なアイディアをモレなくダブりなく多く出すこと。