SEからコンサルタントになる方法
「SEからコンサルタントになるには?」というテーマで書かれた本。 刺さった部分をまとめておきます。
本まとめ
第1章 コンサルタントのことを知っていますか?
コンサルタントとSEの仕事内容の違いと共通点
・SEのしごとはシステム構築にかかわるものになり、システム構築に関係のないことは仕事の範疇外となる
・コンサルタントは問題解決で報酬をもらうので、別にシステムを構築しなくても、問題解決さえ出来ればいい
・SEであれば、クライアントの要望通りに効率的なアドオンを実現すれば仕事は大成功。しかし、コンサルタントはクライントの想像以上の経営改善ができなければなりません。
・SEの場合は、システム構築ありきなので「どうシステムを構築・改善するか」という視点で物事を考える。しかし、コンサルタントの場合は「どの手段で、どうクライアントの問題を解決していくか」という視点で物事を進めていかなければならない。
・SE経験があるコンサルタントはプロジェクトとSEについて理解できているので、プロジェクトの問題点をどう特定し、メンバーの士気をどう上げていくかということに長けている。そのため、コンサルタントの主要な仕事の1つであるPMOについては、SEから転職したコンサルタントは即戦力として活用できる。
・業務のIT化で劇的な効果を上げるためには、入念な設計・開発能力はさることながら、網羅的な要件定義能力が求められる
SEが新たに身につけなければならないこと
・「体力」「献身的な姿勢」「俯瞰力」の3つがコンサルタントに欠かせないものである
・たとえ優秀でも、体調不良でよく遅刻・早退・欠勤す人間は良い評価をできない
・手本を示すべきコンサルタントが体調管理できていないのでは、全体の士気を下げてしまう。またプロジェクトの舵取りをしているコンサルタントが抜けてしまうと、プロジェクトが機能しなくなる
・コンサルタントは基本的に自分で仕事を獲る。継続案件についても、自分で継続の折衝をするし、以前コンサルティングしたクライアントから直接依頼されることも多い
・交渉力が重要だし、クライアントを納得させるプレゼンテーション資料の作成技術も求められる。さらに、身なりや言葉遣いにも気をつかわなければならない
・コンサルタントになるための基礎力やスキルの身につけ方
→何事にもスピードを重視する
→オリジナリティにこだわらない
→できるだけ相手に合わせる
解決しておきたいSEの勘違い
・コンサルタントは、問題解決だけすればいいわけではありません。みずからの”高度な技”や”知恵”を提示しながら、クライアントにも実践してもらう”お手本”としての役目も果たさなくてはならない
・コンサルタントのストレス
→自分の不備・不手際によって、後続(たとえば要件を決めたあとはSEが実装を進めるなど)に大きな影響を与えてしまうという、自分の責任の大きさに対するプレッシャー
→費用面で明らかに”高い”メンバーの部類になるたえ、常にコスト意識に苛まれてしまう
→いくら時間をかけても解決できない、アイデアを要する問題・作業が多い
・辛い点をきちんと理解したうえでコンサルタントを目指して
第2章 コンサルタントになるための基礎力・考え方
1日の仕事量と優先順位の決め方
・コンサルタントは常にクライアントよりも先手を打ち続けなければならない。そのためには全てのことを前倒しで進めなくてはならない。
・常に1日に行う仕事の順番を気にかける。
・10以上かかると見積もられた仕事が1日で終わることは奇跡だが、現実に起こることはある。しかし、奇跡は疑ってかかる。この場合、「品質が犠牲にされた」もしくは「実は虚偽の報告だった」可能性が高い。このような虚偽がすぐに発覚せずに一時的に通ってしまい、後々になって嘘が見つかれば、そのポイントまで戻ってやり直さなければならない。
・炎上プロジェクトには、いままでの遅れを無理に取り戻そうと暴走している方が多い。コンサルタントはこういった判断能力が欠如してしまった人を正しい道筋に戻さなくてはなりません。
「話3分の1の法則」で仕事を割り切る
・「今日絶対終わらせようと思ってリストアップした作業タスクは、だいたい3分の1くらいしか終わらない」という法則
①今日やりたいと思っているタスクをすべて書き出す。最初は順不同で書き出す。
②「今日までに絶対完了させたい」「少しでも前に進めておきたい」ことから優先度をつけて並べる
③そして、改めて今日の目標を定める。
④リストの途中で「ここまでが今日の限界=努力目標」と思うところにいったん線を引く
なかなか目標通りには仕事が終わらず、必ず仕事が残る。結局、大抵の場合には目標の「3分の1」ほどしか仕事が終わらない。そういうものだと割り切るのが正解。そのうえで「できなかったぶんをどうするか」を考えておくことが必要。
・コンサルタントうは次から次へとやることが増えていきます。そのため、リストアップした作業タスクのうちの3分の1以上仕事が終わればその日は大成功。
・できないことまで急いで処理しようとした結果、すべてのことが破綻してしまっては意味がありません。
ゼロから何かを出せますか?
・ゼロから何か出すというのは極端だが、与えられたインプットから仮説や選択肢をつければ、何かしらのアウトプットはできる。
システム構築の場面でいえば、「クライアントからいわれてないので、要件として認識していない」ではなく、「何もインプットは頂いていないですが、おそらくこういった要件があるのではないですか? そうであれば、ご相談に関するソリューションはこのような形になると思われます。何か違和感や間違いなどあれば、改めてインプットを頂けないでしょうか?」という対応が必要。
・クライアントとの初顔合わせでも、クライアントのWebサイトや四季報など、公開されている情報をすべて集め、おおまかなポイントを整理しておきましょう。
・会う方が著名な場合には、インターネット上の記事を確認したり、著書や雑誌の寄稿、講演情報などを調べたりしておくと、ミーティングの話のつなぎにつかえる。
・コンサルタントにとって、非常にマズいのは、「正確でない=間違ったことを言う」こと
・クライアントが公開されている情報は「コンサルタントならば知っていて当たり前」と思っている可能性が非常に高く、今後の信頼関係構築に関わる
・公開情報を押さえておかないと「今後出す予定のアウトプットの正確性」と「アウトプットの創出スピード」の両方において損をしている
・公開情報とはいえ書かれている内容を信じすぎてはいけません。新聞記事ですら統計的信ぴょう性は60%程度と思っておく。「公開されている=事実」と思いがちですが、結局は誰かが主観を混ぜて書いた内容dえあり、必ずしも真実とは限らない。その真相をクライアントに確認することもコンサルタントの大事な営業活動。
打ち合わせごとに必ずアウトプットを渡そう
・次回のやりとりで想定される質問や相談に関しては、公開されている情報収集に加え、そこまでの活動から得られた情報や教訓を活かして、自分なりの回答を軽くでもいいので考えておく
・前回のやりとりで持ち帰った件については、それに対する答えだけではなく、後に予想される次のやりとりのことを想定した準備をしておく。
・クライアントは毎回打ち合わせのたびに貴重案時間を”投資”しています。毎回なにかしらクライアントのためになるアウトプット(おみやげ)が必要。(「有意義なミーティングだった」「今日の話を誰かに聞かせてあげよう」など、クライアントに打ち合わせを有意義なものであったと判断してもらうことが重要)
・このくらいの情報提供は無償なのが当たり前。実際にコンサルティングを依頼していただければ、もっとすごいアウトプットをお見せします。という姿勢を伝えるのが重要。
・報告資料は報告直前につくるのではなく、会議後にドラフトにしておく
すべてに”価値”を付加しなければならない
・たとえ資料の表紙や目次であったとしても、コンサルタントはクライアントの投資に見合うような”価値ある”成果物にしあげなくてはならない
・身なりや言葉遣いにも価値を求められる
自分の長所の磨き方、苦手分野の克服法
・SEの場合はチームプレーでシステム開発を進めていく。しかし、コンサルタントの場合には”個人”が重視される。
・「再利用性は創造性に勝る」と言う考えがコンサルタント業界にはある
・自分でゼロからオリジナルで考えて創出した「自信作」はあまり評価されることはなく、むしろ過去の秀作から「いいとこどり」した作品のほうが、時間もかからないうえに賞賛される可能性が高い
第3章 短時間で最大の成果を上げるマネジメントスキル
PMBOKを進化させたプロジェクトマネジメント応用テクニック
・コンサルタントがプロジェクトに臨むときの7つのロール
①ジャッジ:第3者的に正論を展開し続けマネジメント業務や体制に警鐘をならす
②アバター:PMが理想としているハイレベルな役割を代わりに演じきる
③クローン:PMのコピーとしてPMのいない場面でPM同様に振る舞う
④エージェント:PMの代わりに現場に降臨し、意思決定やチームマネジメントを支援する
⑤エネミー:反面教師として振る舞い、仮想敵として周囲の不満のはけ口となる
⑥サポーター:常にPMの希望通りに言動する
⑦セレクタリ:PMの届かない部分に配慮し、隙間を埋めていく
クライアントには、この7つのロールのうちどれをコンサルタントに求めているかを聞くようにしている。すると、クライントもみずからが何を求めているか明確になるので、クライアントの評判も上々となる。
炎上プロジェクトの救出方法
・プロジェクトで次のことが発生していないかどうか、よく調査する
●タスク定義とマスタスケジュールがいい加減で、進捗が定量的にわからない
●役割定義がいいかげんで「誰がいま何をしているか」まったく把握できない
●要件定義書が足りず、要件管理が属人的
●テストシナリオがなく、網羅的テストができない
●リーダーは実務に忙殺されて、管理業務に一切従事できない
●プロジェクトを俯瞰すべき活動計画者が不在
いますぐできるコミュニケーションテクニック
・どのようなときでも「口頭→電話→メール」の順にコンタクトを試みましょう。口頭の手間を惜しんで、メールばかり多用する人は、あいてから 信頼されないリスクが高い
・”悪い話”ほど”会って”いいましょう
・メールを送ったら、「メールをしておいたので、確認をお願いします」と電話を一本入れる
・コンサルタントは何でも押さえているはずだという目に常にさらされている
守られていない進捗管理の大原則
・プロジェクト型組織では業務を兼務しないのが原則
・進捗管理者は品質管理をしてはいけない
品質の本質を理解する
・「協力会社やクライアントとの”品質意識”の差異」「レビューの形骸化やレビューの省略」をリスクと認識しておき、リスクが顕在化する前に対策を打つ
リスケジュールと課題管理の極意
・作業の節目においては、関係者で必ず課題の洗い出しを行う
・課題管理を周知することで、特定の人だけが知る「課題」の存在をなくし、協力会社やクライアントを含めたメンバー全体で課題に対する共通認識を持つことができます。その結果、いつまでも解消されない課題やリスク分析なしの適当な対策による現場の混乱を防ぐことが出来る
第4章 案件を勝ち取る提案力と営業力
ロジカルに身につけるプレゼンテーションスキル
・意識して話のメリハリをつける
・間を置く。間が出来ると相手は勝手に会話を頭の中でまとめ始めてくれる。そして、「この1文は重要だ」「この次に重要なことを言うかもしれない」と集中力を高めてくれる
・基本的に人間は沈黙に耐え切れないので、顧客がいろいろな問題点や問題解決のヒントを話してくれる
・意識して少しゆっくり話す。打ち合わせは徐々にスピードアップするもの。ゆっくり話すことは「自信の表れ」と好意的に受け取ってもらえる確率が高くなる。
・視線をどこにもっていくか:相手が男性の場合は”ネクタイの結び目”、女性の場合には”額”をみて話す
・相手に質問されたら、話の途中でも即座に中断して応答する。もし後述する内容に関連する場合は「次にお話しますので、お待ちください」と伝える
・否定的な意見はすんなりと受入れて「あとでちゃんと検討いたします」と流してしまう
・否定的な意見を一度こちらが受け入れると「自分の考えをしっかりと検討してくれるコンサルタントだ」とクライントは思ってくれる
・ミーティングでメモをとる姿勢のない人は失格
・できれば相手の目を見ながらメモをとれるようになるとクライアントに好印象を与えられる
・話を聞いて、ここがポイントだと思ったら相手の決まった言葉フレーズをリピートする。相手の伝えたいことをオウム返しすることは、相手と自分の考えの不一致を防ぐ有効な手段。また、心理学的にも相手の心証がよくなるようだ。
・このときは、あくまでも相手の言ったことを”そのまま”リピートする。異なる言葉や言い回しで復唱すると「自分の意見が冗長と思われてまとめられた」と勘違いされる可能性もあるから
・メモをとり、要点を途中で復唱・確認したら、最後にかならず「聞き取ったことの要点」「自分の宿題」「相手の持ち帰り事項」「期日」を確認しよう
・プレゼン資料はプロジェクターで見せることを意識する。プロジェクターで読みやすいのは24ポイント以上の文字。18ポイントでも読めないことはないが、読み手がよほど興味のある内容でないと読んでもらえない。
・印刷物となると、14ポイント以上の文字は不自然に大きく感じる。プロジェクター用につくった資料を印刷するときは2In1にする。
・フォント。本文は明朝にして、見出しや強調したい部分をゴシックにする。
・提案後に好印象を与えるコツ
●出したら「すぐ」「何度も」フォローする
●提案書は先方の要望なしには絶対に変更しない(プライドの明示)
クライントから選ばれるコンサルタントの営業術
・どんなときでもクライアントからのメッセージにはASAPで対応する。回答に時間がかかる場合でも「時間をください」という連絡をすぐにする。そうすることで、クライアントは「丁寧な対応を早急にしてくれる」という印象を抱き、顧客満足度も上がる。
・予算は「妥協」せずに「妥結」する:要件や期間など契約条件の変更をしたうえでの値下げは”妥結”といえる
・既存案件の場合は「拡張」の前に「継続」させる
契約満了時期が近づいた際、報告会を兼ねて次期の継続営業活動をする。この場合、「継続」させることが重要。クライアントから継続と同時に「拡張」を打診される場合もありますが、まずは継続を確定させよう。拡張は当事者を超えた決裁などの追加手続きが多く、継続自体が失われる可能性がある
・案件を断る時:
●報酬金額が折り合わない「ご期待に沿った額に調整できず申し訳ございません」
●先に申し込みのあったクライアントを優先して人品が提供できなくなった場合「御社より前から交渉していたクライアントとの契約が先に成就してしまい、人品が提供できなくなりましたので申し訳ございません:
●契約形態、勤務地、残業の扱い、その他の取引条件が折り合わない場合や、相性が合わない場合「コンサルティングファームは人材資本のビジネスなので、どうしても人材を提供するための条件が合わないと、判断させて頂きました。申し訳ございません
・最後に「また何か機会があれば、ぜひお声掛けをよろしくお願いいたします」と締めくくる
・「やっぱりいいコンサルティングファームはすぐに売り切れてしまうのか」と、好印象を残す
・プロジェクトの終了間際に全力で顧客満足度を上げ、クライントからの評価を最高の状態で終わらせる。プロジェクト満了時に自社がほかにもできることを一通り説明しておき、「今回のプロジェクト以外にも、当社にはいろいろ頼める」ことを覚えてもらう。そして「定期的に連絡をしていいですか?」とコミュニケーションの約束をしたうえで、プロジェクトを完全に終了する。
・あとは友人にならない程度に、季節のあいさつなどの連絡を時折します。相手の状況を聞きながら、自社の稼働状況、旬のサービス紹介など、適度な情報を発信する。
・食事会も効果的に使う
第5章 コンサルタントの報酬体系と採用試験対策
・「給与が上がるか、それとも去るか」のコンサルタントの査定(Up or Out)
会いたいと思わせる職務経歴書の書き方
①最初の一枚でほとんど勝負が決まる
・経歴書は最初の1ページをぱっとみたときに「読むか読まないか」判断される。とくにアピールしておきたいことは最初の1ページにすべて表現する。
②最初に長所と特徴をアピールする
・職務経歴書の冒頭はもっとも重要なアピール・スペース。「自分の強み」を記しておく。例えば「〇〇業界においては、多数の案件を非常に幅広い役割で経験してきました」「プロジェクト管理については、複数の方法論に精通している自信があります」「大規模案件で数々の貢献を重ね、高い顧客満足を勝ち得てきました」
・性格についても欠かさず書いておく。「スピーディーな仕事を常に追求しています。テキパキと実務をこなすのが得意です」「コミットしたことについては、達成されるまで全身全霊で集中して仕事します」「多少の嫌味や無理難題にも感情を表面に出さず、辛抱強く結果を出していけます」など
③職歴は新しい順に時系列に書く
④プロジェクトの成否よりも「自分がどう貢献したか」が大事
・参加したプロジェクトの「目的」「成果物」「規模」「環境」「結果」「自分の関わり方」は最低限書いておく。
コンサルタント採用試験対策
・何か質問したいことはないですか?には必ず何か質問しよう。ただし明らかに即興で作ったような質問、自分の力を誇示するだけの質問をするのはマイナスです。自制を含めたコミュニケーション力、柔軟性を採用官はみている
・コミットメント
「過去にコミットしたことに対して、どうやって実現し、結果としてどれだけプロジェクトに貢献できたか」という説明を求められる